第10章 ストラップの行方
やっと会えた吉田親子に一同はパァッと笑顔になる
「おじさん、サッカー選手のストラップを電車の中で拾ったよね?」
子ども達に目線を合わせるように屈んでくれた父親にコナンは急ぎ足で聞いた
そうそう、この親子に会うのが目的ではなく、持っているであろうストラップが肝心なんだ
「あぁ、息子のだと思って拾ったが、違う選手のヤツだったようで…」
「それ歩美の友達のなの!」
「その子のは千槍駅にあります!」
「返してくれよ!」
返してもらいたい一心で子ども達は前のめりに話し出す
それを聞いた親子はホッとした様に微笑んだ
息子のストラップの所在がわかったからってのもあるかもしれないけど、ストラップを落として同じ思いをしている子に拾ったストラップを返せるという安堵の笑みにも見えた
「悪かったなボウヤ達…」
そう言って父親は右手にはめた手袋を外し、日焼けのない真っ白な手に比護選手のストラップを乗せてコナンの前に出してくれた
それを見た子ども達も「わぁ!」と、やっと見つかった捜し物に歓声を上げる
これで一件落着だな♪
と思ったその時…
パシッ━━!
「えっ!?」
コナンがストラップを受け取る直前で父親の手の上からストラップが消えた
一瞬の出来事だったが、信じられないことに、ハンチング帽を被ったスーツの見知らぬ男がストラップを握りしめて人混みの方へと走り去って行ったのだった
「ウソー!?」
「取られた!?」
「誰ですかあれ!?」
「待てっ!!」
驚く子ども達だが驚いている場合ではないと、オレの身体は自然とスーツの男を追いかけて走り出した
反射的に犯人(?)を追いかけてしまうのは職業病なんだろうな…
「しまった!!」
と、オレが走り出してすぐに一歩遅れてコナンも追いかけて来る
スーツの男はというと砂浜だというのに逃げ足が速く、潮干狩りを楽しむ人達に紛れて見失ってしまった
「クッソォ…逃げられた」
「ってか何で!?ただのぬいぐるみストラップだぞ!?」
焦る様に驚くコナンにオレも同じことを思った
オレ達が捜していたストラップは哀ちゃんの物で、あの男が哀ちゃんのストラップを持ち去る理由が全くわからない
でもあの瞬間に取るにはストラップがオレ達に受け渡されるのを知っていなければできないはずだから、男はずっとあのストラップを狙っていた?
だからなんで!?