第10章 ストラップの行方
「君が丁度神奈川方面にいてくれて助かったよ」
零は悪かったなと言い通話を切ると、その様子を見上げるオレ達に腰を屈めてくれた
「わかったよ、“よしだゆうと”君という名前だそうだ」
すごい、コナン達が電車を降りてから時間が経っているのに、同じ車両に乗ってピンポイントで名前の書いてある窓を見つけ出すことができるだなんて!
でも風見は1人で電車に乗り込んで窓に息を吹きかけたんだよな…?とその姿を想像してなんとなく申し訳ない気持ちになった
大の大人が1人で窓に向かって「はぁ~」なんて息を吹きかけていたらすごく目立つ
周りの人に不審者に見られなかったか、そっちの方が心配だ
零がコナン達に友人が同じ電車に乗っていたから名前を見てもらったと説明している間に『電車ありがとう!大丈夫だった?』と風見にメールを送っておいた
「さて、名前が分かれば後はコレで…」
名前を聞いたコナンは早速博士の道具で何かを始めるらしい
赤い蝶ネクタイをポケットから取り出し、裏側にあるダイヤルの様な物を回している
「設定を拡声器にすれば…」
そう言って素早く零の後ろに隠れ、蝶ネクタイを口元に当てて話し出した
「東京からお越しの“よしだゆうと”様…お連れ様がお見えです…至急海の家の前まで来てください…」
コナンの話すその声は、女性アナウンサーの声で砂浜中に響き渡った
もしこの海水浴場にあの親子がいるならば、このアナウンスを聞いてここにやってくるに違いない
少しの間ここで待機か…と思っていると風見からの返信が届いた
『駆け込み乗車になってしまいネクタイがドアに挟まったくらいなので問題ありません。それより何かの捜査中ですか?次の駅で降りて折り返しますが、また何かあれば連絡ください』
え…もしかして零、何も言わずに指定の電車に乗れって言ったの?
スマホ画面から零へと視線を移すと、またニコりと微笑み返された
公務じゃないんだから言ってあげればいいのに、これじゃ職権乱用じゃないか
しかも“また何かあれば…”だなんて、真面目に返してくれている
頑張ってくれた風見には後で何かお礼をしなくっちゃな
なんて思っていると、オレ達が捜していた親子がついに目の前に現れた
「あの…吉田佑斗は私の息子ですが、もしかして同姓同名の別の方のことでしょうか…?」
うん!動画に映っていたお父さんと息子さんで間違いない!