第10章 ストラップの行方
零の許可をもらったところで子ども達を引き連れ助手席側に回る
ドアを開けて座席を倒し、後部席の方へ歩美ちゃんから乗り込んでもらった
この車は元々後ろに人を乗せる仕様になっていないから後ろに4人座るのは結構キツキツかもしれない
元太はやっぱり助手席か…
「オレも後ろに乗るから、元太は前な!」
「おう!」
そう話して乗り込んでいる間に、運転席側では大人2人が車のドアを挟んで話をしているのが聞こえてきた
「リュウ君の送迎なら、もう少し阿笠博士の家の方に停めても良かったんじゃないですか?」
「僕がここに停まってはいけないような不都合な事でもありましたか?」
「ありませんが、何か訳があるのかと思いまして」
「えぇ、ここはゾクゾクする程寝心地が良いので仮眠を取るには最適なんですよ」
ほら、透兄ちゃんと沖矢さん…いや、零と赤井2人が会うとすぐいつものバチバチが始まる
子ども達は初めて乗る車の車内を見渡して夢中になっているから良いが、事情を知っているコナンはもちろん会話をしっかりとキャッチしていて苦笑いを飛ばしてくるんだからオレも同じ顔をするしかない
「相変わらずなんだね…」
「まだ今日は抑えてる方だと思うよ」
なんてコソッとコナンに言った
これ以上拗れる前に出発しなくっちゃ
元太がシートベルトをしたのを確認し、後部席から身を乗り出して2人の会話の間に入る
「じゃあ沖矢さん、哀ちゃんの事よろしくね!透兄ちゃん、千槍駅まで!」
「「「「よろしくお願いしまーす!」」」」
気を付けて、と沖矢さんに送り出され、子ども達は車内から手を振る
それに応え手を振った沖矢さんの姿を見て、あのライだった赤井が子ども達にね…なんて思ったのは胸の内に隠しとこっと…
***
車内では子ども達が行ったサッカーの試合の話題で持ち切りになり、あっという間に千槍駅に到着した
零も同伴し“お忘れ物総合取扱所”に着いたオレ達は、早速係員に問い合せた件を伝えストラップを出してもらう
「待たせたねボウヤ達!ほら、このストラップだろ?」
係員がストラップの紐を摘んでオレ達に見せてくれたけど、あれ?紐は哀ちゃんのスマホに付いたままだったからもしかしてコレは…
「違うよー!」
「それ真田じゃんか!」
「落としたのは比護選手のストラップです!」