第10章 ストラップの行方
光彦が哀ちゃんの落としたストラップが千槍駅に届けられていることを伝え、歩美ちゃんが今からそれを取りに行くと言う
コナンは「昴さんの車で連れてってくれる?」とお願いしているが、その隣りの元太は沖矢さんの持つカレーの鍋に釘付けだ
「なるほど…彼女は行かないんですか?」
沖矢さんは魂の抜けた哀ちゃんの様子を見て、この状態では行けないだろうと一瞬苦笑いを浮かべた気がした
「残念ですが車はこの後使う用があるので…リュウ君がいるなら、外で待っている彼に頼めばいいのでは?」
「あ!安室さん!」
沖矢さんの提案にコナンは零が外で待っていることを思い出し、勢い良くオレの顔を見る
「オレもそれを言おうと思ったんだけど、待ったなしに飛び出して行くからさ…」
早く言ってくれと言われる前に言ってやった
そして今日のコナンはやっぱりどこかおかしい気がして、みんなでぞろぞろと外に向かう途中、先頭を歩きながらこっそりとコナンに聞いてみた
「ねぇ、哀ちゃんと何かあったの?」
「えっ!?」
「ずっと哀ちゃんのこと気にしてるみたいだったからさ」
「まー…ちょっと色々な…」
む…何その濁す感じ、すっごく怪しいんですけど
でもまぁなんとなく予想できるのは、また例の解毒薬を欲しがってお願いしたら返り討ちにあって機嫌をとろうとしているのかなってとこなんだけど…
そんなにも工藤新一に戻ってしたいことってなんだろうな…
阿笠邸の門を出て工藤邸の方へ向かうと、オレ達に気付いた零が運転席の窓を開けてくれた
「なんだい?みんなで深刻そうな顔をして…」
「透兄ちゃん、相談なんだけど…」
訳を話そうとしたら割ってコナンが先に話し始めた
「友達が落としたストラップを千槍駅まで受け取りに行くんだけど、車で送ってくれない?」
それに続き最後尾を歩いていた沖矢さんが腰を折って運転席を覗き込む
「私からもお願いします…」
連れて行けと言わんばかりのオーラで話す沖矢さんに零は嫌そうな顔をしそうになったが、さすがに子ども達も見ているので平然を装っていた
「リュウの用はもう済んだのかい?」
「うん、もう大丈夫!ねえ、千槍駅までダメかなぁ?」
うーん…と顎に手をやりながら考える零は、きっと頭の中でスケジュールを組み直しているに違いない
「……リュウのお願いなら仕方ありませんね」