第9章 純黒の悪夢
「あ、零待っ…!」
「アーンッ!!」
赤井に殴り掛かろうとした零を止めようとした時、零を見たハロが目をキラキラさせながら零の背中に飛び込んだ
「わっ!!」
「おっ!?」
「うっ…!」
背後からのハロの勢いに零は押され、オレの隣に膝と手を着いたままの赤井の上に倒れ込む
そして赤井も潰れてオレも潰れ、三段重ねになった
もちろんハロは零の上でしっぽを振りながら頬をスリスリしている
なんかこの状況デジャヴ…ってか1人増えたし…苦しい…
「う…大丈夫か…?」
「俺は大丈夫だ」
重なったまま零が聞くと、それに赤井が答える
「貴様に聞いてない!叶音に聞いているんだ!」
「君は大丈夫か?珍しいこともあるもんだ…」
「話を聞いているのか!?それに心配される程僕はヤワじゃない!」
人の腹の上でギャーギャーする様子に、1番下で潰されているオレは何も返す気力がなくなった
というか、このやり取りがなんだか懐かしくて…
「ふふっ…」
「「……!!」」
今日の事だけでなく、赤井が始末されたと聞いた時や、自分が幼児化した時のところまで遡って、今まで感じていた不安が一気に飛んでいった気がした
「ふはは、ははは…っ」
「何がおかしいんだ?」
「叶音、笑いすぎだぞ?」
零から順に動き、ようやく自分の上が軽くなった
そのまま玄関に寝転びながら腹を抱えて笑う様子を、2人は不思議そうに覗き込んでくる
「叶音…?」
「壊れたか…?」
もう、失礼だなぁ…
「みんな状況は変わってるのに、こうして変わらず会えるのが嬉しいなって思ってさ!!」
「アンアンッ!」
ニッと笑うと2人はキョトンとしていたが、息を付き、微笑んでくれた
その笑みに安堵し、我慢していた睡魔がドッと押し寄せ、ゆっくりと瞼が閉じていく
「……スー…」
「このタイミングで寝落ちか…」
「昨夜から気を張り続けていたんだ、許してやってくれ」
「当たり前ですよ、それくらいわかってます」
2人の言い合いはすぐに聞こえなくなってしまったが、この後車に運ばれ、帰れないかもと心配していた自宅へと帰宅することができた
こうして闇に飲まれそうになった一日は無事に終わりを迎え、押し寄せていた純黒の闇はオレ達から一旦離れていくのだった
第9章END