第9章 純黒の悪夢
「アンッ!アンッ!!」
「1人にしてごめんね、ちゃんと帰ってきたよ!」
ハロの前にしゃがんで両手を広げて迎えた
余程嬉しいのだろう、前脚をオレの肩に上げしがみつくハロのしっぽのパタパタは止まらない
「クゥ~!!」
「ちょっ、激しいって…!」
頬をスリスリとオレに擦り付けてくるハロの力強さといったら相当なもので、もう殆ど体力の残っていないオレはグイグイとハロに押されている
「ハロ、ちょっと一回どいて欲しいんだけど…」
「アンアーンッ!」
このままでは倒れてしまいそうでちゃんと膝を着いて抱き直そうとした
ハロを離す様に押すと前脚を下ろしてくれて、一度立ち上がろうとしたその時
「キャンッ♪」
「ちょ待っ…!」
再びハロが飛び付いてきた
そしてオレは完全に不意をつかれてバランスを崩し、ドシンと転がるように尻もちをついて倒れた
ハロはオレに跨って首元をクンクンしながら甘えてくる
「もー!くすぐったいってば~!」
ハロを退かす力もなく、工藤邸の玄関にほぼ横になり、犬に跨られ、何やってんだオレは…と思いながら微笑を浮かべると、ガチャッと玄関が開いた
「Oh…獣姦か?」
「ねぇホントにそう思って聞いてる!?」
高い所からキョトンと見下ろされ、ふざけるなと怒鳴った
冗談さ…と笑いながら言う赤井はハロをオレの上から退かそうとしゃがんで胴を両手で持ち上げた
「ギャウッ!!」
まだ赤井に心を許していないのだろう、ハロは赤井の両手を抜け出し、赤井の後方にあるドアの方へとジャンプをして、終いには赤井の背中を後ろ足で蹴った
それによってよろけた赤井はオレの方へと倒れそうになったが、咄嗟に床に片手をついたからオレが潰れることはなかった
でも、玄関に寝そべったオレが見上げる先には赤井の顔があって、ハロの攻撃で目を細めたその顔が、全然違うのに沖矢さんを思い出させドキッとした
なんかマズい、早く身体を起こさないと…
「すまない、大丈夫だったか?」
「う、うん、大丈夫…」
いや、あまり大丈夫じゃないんだけど、更に大丈夫じゃない状況がすぐにやってくる
━━━ガチャ…
「おじゃましますよ」
「零っ…!?」
「早かったな」
最悪…
何も知らない人から見たら、オレ、絶対押し倒された様な状況じゃん…
今回は風見じゃないと考えると、この後は…
「赤井貴様ァァッ!!」
