第10章 ストラップの行方
〈10章ストラップの行方〉
東都水族館の事件から2ヶ月が経ち、人々の間やニュースであの現実離れした観覧車破壊の話題も自然と消えていった
それと同じ様にオレの背中の痣も痛みも消え、零に湿布を貼ってもらう日々も終わった
零が言うには「良いことだけど淋しい…」だそうだが、貼ってもらう度に「ひぃぃ!」と声を上げてしまう日がなくなりオレに淋しさはない
……ん?オレの悲鳴が聞けなくなって淋しいってこと?
…ではないよな
オレを庇った風見も一時はコルセットを巻いて過ごしていたがすっかり回復し、事件の後始末も全て終わった
組織の方も大きく動く様子はないようで、また変わらぬ日々が戻ってきた
そしてオレは今、零の送迎で阿笠博士の家に到着したところだ
零は車で待ってると言い少し工藤邸寄りに車を停めたから、きっと沖矢さんの動向でも伺って待つのだろう…
「博士こんにちはー!」
「待っとったぞ!」
中には博士しかおらず、珍しさに理由を聞くと、少年探偵団一同は電車でサッカーの試合を見に行っているらしい
まぁでも今日は博士に用があったから特に問題はない
「それで博士、例の物は…」
「もちろん、できとるぞ♪」
ニタァとドヤ顔を見せる博士に、ものすごい物が完成しているんだろうなと期待に胸を膨らませる
そう、今日オレがここに来た理由は……
「じゃーん!折りたたみ式軽量タブレット&いつでもローラーシューズじゃ!」
博士にお願いした発明品を受け取る為だった
沖矢さんを探っていた頃に発明品の話を聞いてから、その後も何度かその話をする機会が増え、終いには意気投合してしまい、なんだかんだ仲良くなってしまったのだ
そしてこの前の東都水族館の一件でボディバッグに入れて持ち歩いていたオレのタブレットは衝撃でバキバキに破損し、それを聞いた博士がすごい物を作ってくれるって言ってくれたから、お言葉に甘えて今日に至る
ドヤ顔のまま博士が両手に乗せて見せてくれた物は、筆箱の様な箱と2本の厚めのスティックの様な物で、これをタブレットやローラーシューズと言いながら出すもんだから首が斜めに傾いた
「博士!説明を希望します!」
指先までピシッと力を入れて挙手し説明をお願いする
もちろんじゃと言いながらソファに促され座り、まずはタブレットの説明を聞いた