第9章 純黒の悪夢
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赤井の車に揺られ工藤邸へ向かう途中、やはり睡魔は襲ってきた
大きなヤマが終わると気が抜けた様に眠くなってしまうのは相変わらずで、できればこのまま車の揺れに身を任せ眠ってしまいたい
ただ、車に乗る前にこの状況を予想した零から念を押されている
「赤井の前で寝るな」と…
もう既に昨夜寝落ちをしてベッドに運ばれてしまったから今更な話だけど、今寝ては零が工藤邸に着いた時に起きられないと思うから眠れない
「酷い顔をしている…」
「んー…見ないで…」
眉間に力を入れているから酷い顔をしているのはわかっていたが、そんな顔を信号待ちをしている間に赤井に見られてしまい両手で顔を隠した
「少し寝たらいい」
着いたら起こしてくれるって言ってくれてるけど、零との約束をやぶる訳にもいかないのでここは頑張ろうと思った
赤井を信用していない訳ではないけど、沖矢さんの一件があってから零は更に警戒を強めている
オレを想っての事だ、オレもそれに応えなきゃって思ってるんだけど……眠い…
ちなみに赤井はオレが零にそんなことを言われているなんて知らないはず
「赤井だってずっと寝ていないし、疲れているのは同じだから、運転してもらってるのにオレだけ寝る訳にはいかないよ」
「そうか…」
そう言いながらも大きな欠伸をひとつすれば、目の前が涙で滲んでくる
「君を待っている間にジェイムズから連絡があった」
「キールのこと!?」
赤井の突然の報告に眠気が一瞬飛んだ
「あぁ。倉庫に着いた時には既にいなかったようだ。自分で抜け出したか、安室君が倉庫を出る時に助けたか、組織の連中が連れ戻しに行ったかだろう」
零は何も言ってなかったからどうだろう…
でもやっぱりオレは零について行かなくて正解だった
零がオレを連れて車を取りに行った所を見られてしまっては、オレは誰だってなるし、零への疑惑が更に増えてしまう
キールが無事かどうかは連絡がなくわからないそうだけど、一先ず安心かな…
車は路地に入り道を何度か曲がると工藤邸が見えてきた
そういえばこんな目立つ車どこに停めているんだろうと思ったけど、それは聞かないでおいた
工藤邸の前に停車したマスタング
先に行けと言われ鍵を受け取り、急いで玄関へと向かった
そして鍵を開けて他人の家だというのに勢いよく中へ入る
「ハロ!ただいまっ!」
「アンッ!!」
