第9章 純黒の悪夢
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地上に降りると零は人気のない建設中のエリアの向こうへと向かい、オレはコナンと合流しようとクレーン車が爆破した方へと走った
周りにはたくさんのパトカーや救急車、消防車が到着しており、梯子車で救助される人や救急隊員に処置を受ける人達が未だ不安気な顔をしている
上も上で酷かったが、下も下で悲惨な状態だ
「コナンっ!哀ちゃん!」
同じ目的地へと向かう2人に合流をした
ゴンドラに残されていた子ども達も無事に救助され、一緒に来ていた蘭さん達と合流できたらしい
「クレーン車の運転、彼女だったんだね?」
「えぇ…あの状況だったけど、最後に彼女と目が合った気がしたわ」
悲しげな表情を見せる哀ちゃんに、きっと胸の内は複雑なんだろうなと感じた
「KEEP OUT」のテープで封鎖されたノースホイールのすぐ隣りには1台の救急車が待機していて、そこに白い布を纏ったストレッチャーが運び込まれようとしている
子どもが声を掛けても状況を教えてもらえなそうだけど、ちょうど良いタイミングで部下2人に支えられ歩きづらそうにしている風見が救急隊員に近寄って行った
やっぱり背中、痛むのかな…
「…!」
風見と部下はオレに気付いたが、人差し指を口の前に立てて「何も言わず知らないフリをして欲しい」と目で訴えた
それに気が付いてくれたのか、特に話を交わさずお互いストレッチャーに近付いた
「待ってくれ、遺体の確認がしたい」
風見の声に合わせ部下が警察手帳を救急隊員に提示して見せた
「構いませんが、身元の判別ができる状態ではありませんよ」
そう言って救急隊員は被せた布を捲り遺体を見せる
オレ達からは見えなかったが、爆発に巻き込まれて焼かれた焼死体だということは安易に想像できた
余程酷い物だったのだろう、風見も部下も遺体を見て顔をしかめた
「わかった、ご苦労。行ってくれ」
再び布が掛けられたその拍子に、ストレッチャーから何かが落ちた
コナンがしゃがんで拾い上げると、哀ちゃんが駆け寄ってコナンの手のひらの中の物を覗き込みポツリと呟く
「これって…」
「ああ」
オレも見せてもらうと、それは真っ黒に焼かれた原型のないキーホルダーの様な物だった
「ボク!今拾った物を見せてくれないか?」
部下に支えられながら風見が左手を差し出した