第9章 純黒の悪夢
こんな所で突然冗談を言う零に首を傾げていると、零は腰を折りオレの頭を撫でる
「こうやってまた叶音と話せるのが嬉しくて、つい…」
「零…」
「叶音、ありがとう…」
そっと優しく触れ合う唇に、あぁ、零は本当に戻って来てくれたんだなって改めて実感した
「絶対に零をひとりにはしないって、約束したでしょ?」
その約束はこの姿になっても、これからもずっとずっと約束のままだ
「だから、零もオレから離れちゃダメだよ?オレを守る為だなんて言って、一人でなんでも背負っちゃダメ…組織に命を狙われることなんて二度とあっては欲しくないけど、もしまたそんなことになった時には、今度は一緒になんとかしよう?」
ね?と言いながらもう一度零に抱きついた
「離れ離れだけは嫌だ…ずっと一緒じゃなきゃ、嫌だ…」
「あぁ…僕も叶音が一緒じゃなきゃダメなんだ…これからどんなことがあっても、一緒に乗り越えよう…」
観覧車の上で、ぎゅうっと2人で抱きしめ合った
こんな時にこんな場所でこんな事をしているだなんて知っているのは夜空の星だけで、
「零をひとりにはさせないよ」
「叶音の事だって、絶対ひとりになんかさせない」
「「これからもずっと一緒に…」」
改めてした約束は、2人の真上に降った流れ星がキラリと音を残して聴いていた
『今から救助隊が順に向かいます!観覧車内にいる方はそのままでお待ちください!!』
「「……!?」」
地上から聞こえてきた拡声器の声に2人して驚いた
現地には既にレスキュー隊が到着し、地上から梯子車の梯子をを伸ばしてこちらに向かってこようとしている
「さすがレスキュー、早いな…」
「感心してる場合じゃないよ!早く降りないと!」
「そうだな!」
ゴンドラの上から観覧車内部の方へと鉄骨を渡り、レスキュー隊員に見つからないようコソコソと走った
見つかってはいけない筈なのに、今度はお互いにこの場を楽しむかの様にニコニコと足が進む
痛みのあった身体は不思議なくらい軽い
このまま2人でどこまでも走り続けることができたらいいのに…
いや、絶対に2人でどこまでも走り続けて行こうと、零の背中を追いかけながら胸に思うのだった