第9章 純黒の悪夢
風見の手のひらに置かれた真っ黒な物体
「何ですかね、これは?」
2本の指で挟み物体を見る風見に部下が問いかけたが、焼けすぎて一体なんなのかオレ達には全くわからなかった
「まさか、記憶媒体!?」
NOCリストを盗み保存をした物なのではないかと風見は口にしたが、それをコナンは否定した
コナンも哀ちゃんもそれが何なのかわかっているようだ
「記憶じゃない、思い出だよ…黒コゲになっちまったけどな…」
「コナン…」
振り返り歩き出したコナンの寂しげな背中を見つめる
部下達は子どもらしくない言葉を発したコナンを驚きながら見ていたが、風見もオレも実際の事はわからないながらに、この黒コゲになってしまった物が儚いモノなんだなと、なんとなく思った
組織の命令でNOCリストを狙って警察庁に侵入した彼女が、組織から逃げ出し少年探偵団の子ども達を命懸けで助けたんだ……彼女と子ども達の間に、何か温かいモノがあったに違いない…
救急車は遺体を乗せて走り出した
風見と部下に「後はよろしく」と会釈をし、コナンと哀ちゃんにも一声掛けて、零と赤井がいるであろう駐車場へ向かった
***
赤井の車が停めてある駐車場と水族館を仕切るように並ぶ木々の間を抜けていく
これでキュラソーが死亡したのは確認できた
警察庁に侵入し盗みを働いた犯人を裁けないままこの事件は終わりを迎えてしまったが、彼女に罪を犯させてしまった根本的な部分、即ち例の組織はまだ野放しのままだ
奴らがまた大きく動き出す前に、そして零にまた危険が降りかかる前に、早く手を打ちたいところだ……
………あ
今日のこの一件、公安的措置を考えるのもまた骨が要りそうだ
本当にあの組織は色々やらかしてくれるよ…
今日の事を振り返りながら、そして今からのことを考えながら駐車場へと林を出ようとした時、零と赤井が睨み合ってあかるのが見えた
まさかまたあの二人…
「赤井!零!」
ファイティングポーズをしていなかったが、絶対に視線で戦っていたに違いない
「また喧嘩してたんじゃないよねぇ?」
「続きは組織を阻止してからにしろと言ったのはリュウだろ?」
「そうだな、そんな事も言われた」
先程とは違って今度は赤井も何故かノリノリだ
「もう!!阻止したけど喧嘩はダーメッ!」