第9章 純黒の悪夢
「なんて子だ…本当にこの巨大な観覧車を止めるとは…」
梯子を降りていくと、髪をかけあげながらノースホイールをみつめる零がいた
「オレ達の救世主って感じだよね…!」
「叶音…」
よっ、とゴンドラの上に飛び降り、零の隣りに立つ
見上げると、これで終わったなという様な清々しい顔が見下ろしてくる
「キュラソーの行方、捜しに行かないと!」
「いや、奴らはキュラソーを狙って弾丸を撃ち込んでいた。そして最後に車軸を狙って観覧車を崩壊させたということは、キュラソーの始末は済んだと考えていいだろう…」
現にキュラソーは組織から逃げ出そうとしていた様だからな、と零は言う
裏切り者には制裁を…それがジンのやり方だ
ジンからはそう簡単に逃げられない…そう考えたら、キュラソーはもう…
「NOCの疑いも晴れた様だし、NOCという証拠ももうない。あとはこの事態の後始末のみだよ」
「…また元の生活に戻れるってこと…?」
「あぁ、おかげさまでな…」
やわらかい笑みが降ってくる
そっか…やっと終わったんだ
また零とあの家に帰れる
これからも零と一緒にいられる…
「おっと…!」
零の腰に、ぎゅうっと力一杯抱きついた
一度はもう触れることすらできないかもって思ったかけがえのない人が、今、オレの腕の中にいる…ちゃんと、生きて戻ってきてくれた…
「おかえり…」
そう言うと零は一旦オレを離し、両膝をついてしっかりと抱きしめ直してくれる
「ただいま…心配掛けてすまない…」
「零が無事ならそれでいい…っ」
頭を撫でるその手は優しく、心地良い
そしてどちらからというわけもでもなく、お互いに目を合わせた
「叶音」
頬に掛かった髪を耳に掛けてくれて、ゆっくりと零の顔が近づく
受け止めようと目を閉じた、その時…
ヴーヴー…
ヴヴ、ヴー…
お互いのポケットから振動音が聞こえ、2人で目をパチクリさせてから苦笑いをした
やれやれといった様子で零がスマホを確認するのを見て、オレもスマホを取り出す
電話の相手はコナンだった
「はい…」と出た零、「もしもーし」と出るオレ
『降谷さん無事ですか!?』
『リュウ無事か!?』
零と2人で目と目を合わせ、肩で笑った