第9章 純黒の悪夢
「何事っ!?」
音のする方を見ると、建設エリアからクレーン車がフェンスをぶち破ってものすごいスピードでノースホイールに向かってきている
まさか組織の奴らが!?
…いや、こんな目立つやり方はしない…一体誰が!?
クレーン車は植木をなぎ倒しながら進み、そのままノースホイールの正面に突っ込んだ
クレーンの先端が鉄骨に当たり火花を散らす
タイヤを空回りさせがらもクレーン車はホイールを押し続ける
一体誰がそうしているのかわからないが、クレーンに引っかかったホイールは動きが変わった
これなら止まる!
コナンのボールもかなりの大きさまで膨らんでいる!!
「「「「止まれぇぇぇーっ!!!」」」」
誰もが皆そう叫んだ時、クレーン車で押されたホイールの片側のレールが浮かんで傾いた
重力によってその傾きはすぐに戻ってしまい、反動でホイールがクレーン車の上に落ち、運転席がグシャリと潰れ、土煙が巻き上がった
地上にいる人々は無事だろうか、クレーン車を運転している人は無事だろうか、焦る気持ちから身を乗り出し、目の前で起こっている事態をここから見える範囲で瞬きせずひとつひとつ確認をした
傾きが戻ったホイールはバラバラと鉄骨の瓦礫を地上に落としているが、確実に動きは鈍くなっている
もうこれで止まってくれ…!
そう願った時、
ズドォォォン━━
秒針が止まったかのような一瞬の出来事であった
煙に包まれたクレーン車は地響きを立てながら、爆発した
そして爆発の衝撃で進行方向が若干傾いたホイールは、水族館の残骸に引っかかり、ようやく動きを止める…
「と…止まった……?」
反響していた衝撃の音もなくなり、辺りに静けさが広がった
ホイールの様子をこの場にいる全員が見守った
再び動く様子は、ない…
「よっしゃー!!」
「うぉぉぉー!!」
「止まったー!!」
「良かったー!!」
ワァァー…っと地上から何人もの歓声が湧き上がり、静寂を消した
組織ももういない、観覧車も止まった、これ以上の被害はもうないだろう…
ただ気になるのは、クレーン車を運転していた人の安否と、囮になって組織から逃げたキュラソーの行方…
そうだ、NOCリスト…
「…零っ!」
ゴンドラへと繋がる梯子を使って零のいる所へ急いだ