第9章 純黒の悪夢
「それは?」
「伸縮サスペンダー、博士の発明品のひとつさ」
ベルトだと思った物はサスペンダーだった
コレを使って転がる観覧車を引っ張ると走りながら説明されたが、想像できず頭の中はクエスチョンだらけだ
でも、博士の発明品ならやれないことはないんだろう…
コナンはサウスホイールの鉄柱2本にサスペンダーを引っ掛け、左右に分かれていたジョイント部分を繋げる
そしてボタンを押すと引っ掛けたサスペンダーがギュッとしまった
「反対側をノースホイールに繋げてくる」
そう言いながら銀色のボタンの様な物をオレが着ている上着の襟元に付けられた
「コレは?」
「スピーカーだよ。ここからオレの合図が聞こえたらサスペンダーのボタンを押して欲しい」
ボタンと言うのはさっきコナンが押した部分だろう
そこを押すとサスペンダーが縮み、その時に向こうの観覧車も引っ張られるって訳か…
「頼んだよっ!」
「う、うん!!」
コナンはサスペンダーを握りしめたままオレを残して走って行く
その先に見えるノースホイールは芝生の傾斜に差し掛かり、滑るように坂を転がり出した
「坂で加速してる!」
「コナン君っ!」
加速をコナンに叫ぶと、零がコナンと並走し始め何かを話している
次は零がコナンに協力する番だ…
2人は通路の先に着き、零がコナンを抱きかかえて手すりに乗りそのまま大きくジャンプをして下方へ飛んだ
通路の下の様子はここからでは見えないが、その間もサスペンダーは伸びているからこれを使って上手く着地はできただろう
「うおおおっ!!」
「届けぇーっ!!」
聞こえてきた零とコナンの叫ぶ声、そして見えたのはコナンが砲弾のようにノースホイールへと飛んで行く姿
…まさか零がコナンを投げたっ!?
遠く見えるコナンはノースホイールまで届くか届かないかギリギリの様な気がした
万が一落下するようなことがあればこのサスペンダーのボタンを押して引き上げられる
でもそれでは転がる観覧車を止めることはできない…!
「お願い届いてっ!!」
もう少しというところでやはり届かないのかと、コナンを引き上げる為ボタンを押す体勢に入った
するとノースホイールの梯子に人影が見え、その人影にコナンは腕を捕まれ落下は間逃れる
目を凝らして見ると、人影はノースホイールに残ったままの赤井だった
良かった、なんとか向こうに渡れた…
