第9章 純黒の悪夢
「あっぶな…」
もう少しという所で足場が崩れ、幸いにも手すりだった部分を掴んでいた為落下は間逃れた
しかし掴んだままぶら下がっていて、安心できる状況でないことには変わりない
手すりもしっかりと固定されているわけではなく、いつ崩落してもおかしくないが、とりあえずもうすぐ着く筈だった通路へと雲梯を進むかの様に斜めに上り進んだ
「…っ」
さて、ここからよじ登る体力があるかどうかが問題だ
オレの掴んでいる部分は通路とほぼ同じ高さまで崩壊していて、最悪なことに頭よりも高い位置に通路がある
普段のオレなら簡単だが、ゴンドラの落下や打ち付けられた時の痛みが残ったまま、体力もそこそこ削られているこの状況で、上がれるのか…?
「ふぅー…」
上がるのを諦めたら、限界までこのままでいるか、落下か、それしか選択肢はない
深呼吸をして一気に腕に力を入れた
「くっ…」
懸垂をするかの様に腕で自分を引き上げる
上がった所で片腕ずつ通路に移動させ、身体を引っ掛けた
あとはここから上半身さえ上がれば…
「…っい…ッ」
背中の痛みに顰めながら、ここで力を抜いてしまってはダメだと言い聞かせる
でも上にも下にも行けないこの状況に、刻々と体力の限界が迫ってくる
「っ…落ちてたまるかァ!」
歯を食いしばりながら全身に力を入れ、渾身の力で胸を通路に上げた
あともう少し身体が乗ればという所で通路に這わせていた手が痺れ、上手く力が入らなくなってくる
これはマズいぞ…
「叶音っ!!」
「零!!」
ありがたいタイミングで遠くから物凄い速さで零が駆け寄って来る
しかし身体を支えている手や腕はもう殆ど感覚がなく、零がオレの元に辿り着く前にズルッと滑った
「っ…!」
「大丈夫かっ!?」
間一髪のところで腕を零がガッチリと掴んでくれて落下は間逃れる
そしてそのまま引き上げられ、零の腕の中へと辿り着いた
「心臓がいくつあっても足りないぞ…」
「ハハ…ごめん、ありがと…」
その言葉をそっくり返してやりたいところだけど、今はただただ感謝するしかなかった
思えば今日はみんなに助けられてばかりだ…オレももっとしっかりしないと…
「動けるか?」
「うん、大丈夫!」
身体のどこかしらが痛むけど、このくらいならまだ大丈夫
腕の感覚も戻ったし、零とも合流できた
そろそろ反撃を考えないと…!
