第9章 純黒の悪夢
頭上からバキバキと音がし、鉄骨の破片が降ってきた
見上げればアームの爪がゆっくりと開き始め、ゴンドラを離そうとしているではないか
もちろんゴンドラは支えの軸から外された状態でアームによって宙に浮いていて、このまま離されてしまったら急降下は目に見えている
ヤバい!落ちるっ!!
「早く何かに掴まって!」
コナンに勢いよく叫びながら、気を失って動けないままの風見の元へと駆け寄り、一番守らねばならない頭部を抱え込む様にして自分自身も丸くなった
そしてすぐさま浮遊感を感じ、固定していない身体は重力のままに跳ね上げられる
「うわあっ!!」
「くっ…!!」
ゴンドラは通路を破壊しながら大きな音を響かせ落下していく
所々にぶつかるその衝撃に身体を打たれ、歯を食いしばった
何度か繰り返された衝撃の最後には物凄い勢いでゴンドラの割れた窓から風見ごと外へと投げ出される
「ぐはぁっ!!」
そのままどこかに思い切り叩きつけられ、辺りの残響が徐々に遠くなっていくのと同様に意識が遠のいていく
「か、ざみ…」
「ううぅ…」
良かった、なんとか生きてるようだ…
抱え込んだままの風見の声に安堵するのと同時にフッと身体に力が入らなくなり、目を閉じる
「リュウっ!おじさんっ!」
意識がなくなる寸前にコナンの声と駆け寄って来る足音が聞こえた
そうだまだ終わってない…奴らは真上にいる!
意識を戻せ自分…!
身体の痛みに耐えながらゆっくりと目を開けると、必死にオレを呼ぶコナンがいた
どうやら観覧車内部の通路の柵と風見の頭の間に挟まっていた様で、オレが動ける様にコナンが風見の身体を起こしてくれた
「動けるか!?」
「うぅ…、なんとか…」
痛む身体を横に移動し、ふぅ…と息を吐いた
柵に強打した背中の痛みはあるが、なんとか身体は動かせそうだ
「おじさんもしっかりして!」
「ハハ…そのおじさん、風見って言うんだ」
コナンは再び風見の肩を叩き意識を戻そうと試みる
高校生にしてはおじさんに見えるかもしれないけれど、風見はオレの1つ上だから、まだお兄さんって呼んであげて欲しいな…なんて場に合わないことを考えていると、上の通路に引っ掛かっていたゴンドラがギシギシと音を立て始めた
「マズい!」
「移動しよう!」
今にも崩れ落ちてきそうなゴンドラの下から、2人で風見を引っ張り避難した
