第4章 夜想曲/ポアロの彼と名探偵と
「零おはよー」
「あぁ、2度目のおはよう」
顔を洗って着替えてリビングに向かうと、エプロン姿の零が朝食を作って待っててくれた
「昨日は先に寝ちゃってごめんな」
「謝る必要はないだろ?僕が先に休めって言ったんだから」
「んー…でもなんとなく…」
今日のメニューは和食
ズズーっと味噌汁を飲むと、なんだか幸せな気分になる
朝イチの零の味噌汁大好き、と思っていると、綻びすぎたオレの顔じっと見ている零がいて
あんまり見ないでください、恥ずかしいです…
「メールで言ってた盗聴器、処分しておいたから」
「あ!そうそう、助かったよ!ありがとう」
「それで、毛利小五郎に江戸川コナンくん、少し近づいてみようと思って、今日からポアロでバイトをすることにしたよ」
ポアロというのは毛利探偵事務所の下の階にある喫茶店らしく、そこでバイトをしながら毛利小五郎の弟子となり、事務所に依頼があった時には一緒に探偵をすると…
「喫茶店ってことはさ、料理とか作ったりするの?」
「あぁ、喫茶店だからね」
「ふーん…」
「料理で思い出した。沖矢さんってどこの誰なんだ?」
この流れで沖矢さん!?
「江戸川コナンくん達のことは本庁で聞くよ。そっちは仕事だからね」
ということは、沖矢さんのことはプライベートで聞いてるということだろうか
ちょっと待って
クリームシチュー貰っただけなんですけど
「沖矢さんは風見の捜査資料にもあった工藤邸に住んでる人で、阿笠博士に夕飯のお裾分けをしに来たところ、たまたまオレがいて…」
「たまたまお裾分けをしてもらったと?」
「はい…流れで…」
あれ?ちょっと怒っていらっしゃる?
「初対面の人から貰った物を安易に口にしない方が良い」
「あ…ごめん…」
「謝って欲しい訳じゃなく、その、僕以外の男が作った物をあまり食べて欲しくないだけだから…」
え?
それってまさか
「零、嫉妬してるの?」
「…悪いか」
視線を逸らしながら味噌汁を口にする零の頬がほんのり赤くなってた
もしかして、置き手紙を読んだ時から嫉妬してたのかな
何の深い意味もないもらった物を食べただけで、ましてや大人が子どもに善意であげただけのことなのに、嫉妬してくれるだなんて…
なんか嬉しい!
でも…
「じゃあオレも言わせてもらうけど」
「?」
「零が作った物、知らない人に食べてもらいたくないな」