第9章 純黒の悪夢
朝方にも来た、キールが呼び出されていると言っていた倉庫の裏に着いた
倉庫の壁と外に積まれたコンテナの隙間に降ろされ、赤井は周りを見てくるとこの場を離れて行く
この倉庫の壁の向こうにはジンがいる…
そう思っただけで心拍数は上がっていくのに、中から響いた一発の銃声に心臓が飛び出しそうになった
まさか零が撃たれたんじゃないかと壁の数箇所空いている穴の1つからそっと中を覗く
入口にはジン、その隣りには三脚式の投光器が立てられていて、照らす先には鉄骨の柱に後ろ手で手錠をはめられて立っている零と水無怜奈の姿があった
零の姿が目に入った瞬間思わず声が出そうになり、片手で口を覆って同時に息を殺した
見た限りだと先程の一発は2人のどちらかが撃たれたのではなく、威嚇射撃といったところだろうか
「(大丈夫か?)」
銃声を聞いて戻ってきた赤井が唇だけで話し掛けてくる
大丈夫だということを頷いて返すと、赤井も別の穴から中を確認する
「キュラソーが伝えてきたNOCリストに、お前達の名前があったそうだ」
「キュラソー…ラムの腹心か…」
「ええ…情報収集のスペシャリストよ」
ジンの話に続いて零と水無が話し出す
キュラソーの特徴は左右の目の色が違うオッドアイで、組織では有名な話だそうだ
「昔のよしみだ、素直に吐けば苦しまずに逝かせてやるよ」
そう言ったのはウォッカ
ここから姿は確認できないが、おそらく零と水無の横の方に積み上げられている木箱の辺りにいるに違いない
「僕達を暗殺せずここに呼んだのは、そのキュラソーとやらの情報が完璧ではなかったから…違いますか?」
零の推測にさすがだなと言うジンは、投光器の横に置かれた木箱に腰を掛けタバコを吹かし始めた
そしてウォッカの反対側からベルモットの声も聞こえてくる
「NOCリストを盗んだまではよかったけど、警察に見付かり逃げる途中で事故を起こしたあげく、記憶喪失なのよ」
やはりそこまで情報は掴んでいたのか…
だとしたらベルモットが警察病院へ現れたのも、キュラソーを追って様子を見ていたからだろう
きっと東都水族館からずっと見張っていて、逐一ジンに報告をしていたに違いない
キュラソーが公安に引き渡されるというのも知っているんだろうな…
そしてここで2人を始末した後、公安からキュラソーを奪還すべく動き出すだろう…
