第9章 純黒の悪夢
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倉庫から少し離れた場所に車を停め、装備をする為トランクを開ける
いよいよ組織の集まる現場に行くのかと思うと軽く悪心を感じ、気分はあまり良くはなかった
幼児化してからジンに近付くのは初めてだし、零の安全を確保できなかったらどうしようとか、万が一組織に見つかることがあったらどうしようとか、良くない考えばかりが過ぎる
何年警察やってんだ、これでも公安だぞ?大丈夫だから落ち着け自分……そう言い聞かせても言う事を聞いてくれない自分の気持ちが鬱陶しく感じる
赤井は緊張をしているオレとは逆に着々と準備を進めていた
オレにとトランクから出してくれたホルスターは当たり前だけど大人用の為、何ヶ所かをきつく縛って斜めがけの用にし、左脇に銃を隠した
上着を着れば微妙な膨らみに違和感はあるが、街中に出る訳ではないから人目につくことはないだろう…
借りた銃は小型とはいえ、久しぶりの銃の重さに背筋がピンとした
「顔色が良くないようだが?」
目の前で膝をつく赤井の片手がそっと頬を包む
大丈夫かと尋ねられても自分でもよくわかっていなくて、返事ができなかった
「無理ならここにいるんだ」
赤井の言うことはご最もだ
こんな状態の奴が狩場に出ても逆に狩られてしまう
「無理じゃない…オレが零を助けなきゃ…」
そう言ったら思った以上に声が震えて自分でも驚いた
あれれと胸を撫でるも赤井には深くため息をつかれてしまい、申し訳ない気持ちになる
「君達はお互いの事になると頭が正常に働かないらしいな」
「え…?」
「君が毒薬を飲んで意識を失った後、降谷君もうろたえるだけでどうしようもなくなっていた」
確かに零は「僕は何もできなかった」と言っていたが、赤井が気になるくらいそんなにどうしようもなくなってしまっていたのか…
「そんなに想い合っているのであれば覚悟を決めろ…君が降谷君を護るんだろ?」
「うん…!」
励ましてくれたのだろうか、赤井の言葉に背中を押される
「ったく…君達を見てると妬けてくる…」
「どういうこと…?」
首を傾げれば赤井の顔が近付いてきて、避ける間もなく左頬に柔らかい物が当たった
「さぁな…」
ニッと口角を上げる赤井に思考が停止しそうになった
オレ…き、キスされた…?
「ま、またそうやってからかうっ!!」
「俺の国では挨拶だ」
「ここ日本だしっ!」