第9章 純黒の悪夢
毛利先生はそのテンションのまま飲み物を買ってくると言い自販機の方へヨロヨロと遠ざかって行った
「記憶喪失の女性の通報してくれてありがとな」
「その事なんだけど…」
「さっき哀ちゃんから聞いたよ」
哀ちゃんが言ってたから聞かれると思って、保護した女性は組織の工作員だと同じく答えた
「まさかラム!?」
「ではないから安心して。詳しいことは言えないんだけど、今公安であの女性のことを追ってるんだ」
コナンのことだから警察に引き渡して終わりではないだろうし、現に哀ちゃんが「工藤君が情報を掴もうとしている」なんて言っていたんだ、これからキュラソーについて何か詮索を始めるに違いない
「公安が…」と顎に手を当て目を細めて考えるコナンに、何を言われるんだろうかと少し構えた
「実は彼女がベンチにスマホを放置していったから預かってるんだ」
「スマホ!?」
アレコレ聞かれるのかと覚悟したが、逆に救世主と言えるような言葉が飛んできて驚いた
「完全に壊れてるけど内部データを修復すれば何か分かると思って」
コナンがポケットから出したキュラソーの物と思われるスマホを見ると、確かに破損は酷いが内部データの記憶媒体が破損していなければ修復は可能だろう
もしかしたらNOCリストのデータが保存されてるかもしれないし、そのデータを組織に送っているのなら送信履歴も残っているはず…わかればどれだけの情報が漏洩しているのかも掴める!!
「これ、公安に持ち帰って…」
すぐに解析してみる…と言い出そうとして気付いた
「あー!ダメだ!研究室行けないの忘れてた…!」
「研究室?」
研究室に行けばすぐに解析できるのに、その肝心な本庁にオレが入るには零か風見が一緒でないといけない
零は絶対無理だし、風見もキュラソーの身柄引き渡しの手続きで合流するには時間が掛かりそうだし…
「いや、自分で解析しようと思ったけど、今はできないのを思い出して…」
「これから博士にデータの修復を頼むつもりだったから、わかり次第連絡するよ」
え、なんて?
「公安も動くくらい大事なデータが入ってるかもしれねーんだろ?」
「そうなんだけど…」
この子は神様なんだろうか
キュラソーの記憶媒体となるスマホを手に入れ、中のデータまでも修復してくれると言う
こうなったらこの小さな名探偵にも協力者になってもらうしかないな…