第9章 純黒の悪夢
哀ちゃんは博士に子ども達を車に連れて行くよう伝え、オレの腕を引いて壁際へと移動する
「交通事故にあったかもしれない記憶喪失の女性を保護したのって、哀ちゃん達だったんだね」
「えぇ…ってまさか、あの人を追ってここに来たって言うの!?」
周りを確認しながらコソコソと話すも、哀ちゃんはどこか切羽詰まった様子である
「気付いてると思うけど、あの女性、組織の工作員なんだ」
「!?……工藤君にも言ったけど、あの人記憶喪失を装って私達に接近してきたんじゃないかって…」
女性はオッドアイで片目は義眼かもしれず、ラムの特徴を臭わせていると哀ちゃんは言う
「工藤君は記憶喪失が本当なら、保護して記憶を戻せば組織の情報が手に入るんじゃないかって思ってるみたい…でも記憶が戻ってしまったら工藤君もあの子達もみんな消されてしまうかもしれないわ!早くあの人から子ども達を離さないとみんな「哀ちゃん!」…っ!?」
堰を切る様に話す哀ちゃんの言葉を途中で止めた
いつも大人っぽい哀ちゃんでもこんなに取り乱すことがあるんだなって驚いたが、それ程あの子達が大事な存在なんだって、痛いくらいわかった
「大丈夫、あの女性はラムじゃない」
「…本当…なのね…?」
「うん。でも組織の一員で、保護する前に記憶が戻るとマズいことには変わりないんだ。ここからはオレ達公安の出番。なんとかするから安心して、ね?」
とにかく哀ちゃんも子ども達もキュラソーと関わってしまったからこの場から離れて欲しい
いつどこで組織の目が光っているかわからないし…
哀ちゃんの肩を掴んでそう伝えると力強く頷いてくれて、「…気を付けて」と言って博士の車へと駆けて行った
そうこうしている内にキュラソーがストレッチャーに乗せられ救急車へと運び込まれる
高木刑事と佐藤刑事も出てきて、2人の会話から警察病院へ向かうことがわかった
これは風見に連絡しないと…
「リュウじゃねーか!」
ポケットからスマホを取り出そうとすると、スタッフルームから出てきたコナンに声を掛けられる
毛利先生も一緒だが、なんだかちょっと残念そうな顔をして肩を落としている
「毛利先生どうしたの…?」
「あー…保護した女性に会えなくてガッカリしてるだけだから気にすんな」
ハハ…何も知らないって良いよなー…