第9章 純黒の悪夢
『そして今回のリニューアル最大の売りである、世界初の二輪式大観覧車です!』
南北それぞれにノースホイールとサウスホイールを用意し、搭乗した方角により違った景色が楽しめる…つまり、軸を挟んで大車輪が二重になって回っている観覧車である
ゴンドラはよく見る丸型ではなくカプセル型の横長な形をしていて、6名程乗ってもゆったり座れる広い空間となっているようだ
『また、観覧車の周りに配置された噴水からは水と光のスペシャルショーが行われ、地上100mからの絶景とのコラボレーションを楽しんでいただけます!』
赤、青、白、橙、緑のライトが地上から空へと照らし出され、左右に揺れては時々5色が重なり別の色へと配色を変えている
その間に噴水が上がると、イルミネーションの様にキラキラと輝き、夜に見たらとっても綺麗なんだろうなと思った
「ニュースだけじゃわからないな…」
東都水族館のニュースが終わりポツリと呟くと、突然着信画面へと切り替わり“風見裕也”の文字にすぐ通話ボタンをタップした
『工作員の情報が捜一に入りました』
「捜一に?」
『はい。交通事故にあったと思われる記憶喪失の女性が東都水族館で保護されたと通報があったそうです』
写真も入手でき、風見も確認をして昨夜警察庁に侵入した被疑者で間違いなかったそうだ
「捜一に流れた情報掴むの早かったね」
『降谷さんですよ…』
あの人の情報入手スピードが恐いと言うが、きっと捜査一課の管理官との繋がりがあっての情報に違いない
零が風見と連絡が取れているということは、まだ単独で行動できているんだろうなと少し安心した
「実はオレ、東都水族館に向かってるところなんだよね」
『本当ですか!?我々もすぐに向かいたいのですが…』
「身柄引渡しの手続き準備でしょ?他は捜索に出ちゃってるだろうし、今一番水族館に近いのはオレだね」
捜一と聞いて真っ先に浮かんだのが目暮警部と高木巡査部長である
もしこの2人が動いているのであれば、上手いことキュラソーに近付けるかもしれない
『被疑者は組織の人間なんですよ!?いくら記憶喪失だと言っても、接触するのは…』
「極力接触は避けるよ」
じゃあ、と電話を切る
もっと早く気づけていれば良かったけど、それでも今、東都水族館へ向かっていて正解だった
「赤井、キュラソーは東都水族館にいるって!」