第9章 純黒の悪夢
倉庫街を端まで探索し終わると、車はスピードを上げて大通りへ出る
首都高は昨夜の事故の影響で一部区間が通行止めの為、東都水族館までは下道を行くしかなかった
東都水族館や湾岸周辺の施設に向かう車が多く緩やかな渋滞もできていて、それ程遠くはないけど到着は昼前になりそうだ…
ゆっくり進んでいる間にニュースでも確認しようとスマホを取り出す
真っ先に映ったのは昨夜の大規模停電のニュースだった
『首都高速道路を走行中の車が高架下の倉庫街で爆発、炎上する事故がありました…車の運転手は現場から立ち去った模様で警察が行方を追っています…どの様な状況で車が転落したのか、詳しいことはわかっておりませんが…』
「マスコミへの情報はちゃんと止まってるみたいだね」
「その様だな」
「ちなみにだけどキュラソーが転落した原因って?」
「……」
事故現場にいたと言っていた赤井なら知っているかと思って聞いてみると、返事が返ってこなかった
急に黙った赤井を不審に思い「何か知ってるの?」と問い詰めると、想定外の答えが返ってくる
「キュラソーの車のタイヤに一発かましてやったらスピンしていってな…事故に巻き込まれて後輪を道路の外に乗り出したまま停まっていたトレーラーにぶつかって、引きずられるように落ちて行った」
タイヤに発砲…カーチェイスに決着は着いたけど、結果逃げられてしまっている
赤井の発砲が原因で取り逃したとは言わないが、発砲許可取っていないのは零が怒る!
「…車を止める為にやむを得ず発砲したってことにしとくね」
「助かる…」
ここは日本、後々バレた時に庇いきれなかったら困るから、できれば発砲は避けて欲しいのにな…
仕方ないなぁと思いながらニュースに目を戻すと、これから行く東都水族館の話題が始まっていた
「中継が入りそうならよく見ておいてくれ」
「うん」
『注目していただきたいのは、遊戯施設や各種店舗を全て屋内に設置したことです!』
今日の映像かどうかはわからないけれど、客が遊んでいる様子が次々と映し出されている
赤井から聞いたキュラソーの特徴である、銀色のロングヘア、服装は変わっていなければスカートスーツの女性を、映像から探した