第9章 純黒の悪夢
捜索範囲の連絡は風見に送ってある
暗い時間帯はできる限りで捜索をしていただろうが、そろそろ日の出だ、風見達も本格的に動き出すに違いない
何かあれば連絡が来るはずだから、何も無いってことは状況は変わっていないということだろうなと思って首を横に振った
玄関先に置いた荷物を持ち、オレ達の足音で起きたハロを撫でる
「ハロ、少しの間お留守番お願いね…」
「クゥ…」
不安そうに見つめられギュッとしてやる
そして家主やコナンが帰ってきた時の為に“玄関先にハロを置かせて欲しい”と書き置きをし、赤井と共に玄関を出た
「そういや沖矢さんにならなくていいの?」
「あぁ…表立って動くつもりはないからな」
と言われても、赤いマスタングじゃ目立つ気もするんだけどな…
そう思いながらも赤井のことだからきっと大丈夫なんだろうと、昇り始めている朝日に目を細めながらマスタングに乗り、工藤邸を出発した
***
工藤邸を出発し向かっている先はキールから聞いた港の倉庫だった
途中でコンビニに寄り朝食を買って、車の中で食べながら移動をする
車の窓越しに昇る朝日を浴びると、零と別れてから夜が明けるまでの時間が長い様な短い様な、時間の感覚がおかしく感じた
零は少しでも眠れただろうか…
ご飯はちゃんと食べられただろうか…
気持ちを切りかえたはずなのに、ふと零の事を考えると不安が甦ってくる
組織の招集時間までは12時間を切った
それまでになんとかできるのか…
「着いたぞ」
シャッターの閉まった倉庫が並ぶ人気のない港に降りると、真冬ではないのに冷たい空気を感じる
ジン達は海外にいる為、今ここに組織が現れることはないだろう
そう思って赤井に付いて行き、倉庫の周辺をリサーチする
倉庫の裏側に回るとコンテナが積まれていて身を隠すにはちょうど良さそうで、コンテナと倉庫の壁の間には人ひとりが入れそうな隙間があり、そこに赤井は入っていく
壁に穴があいた箇所があったのだろうか、覗き込んで中の様子を伺うと一旦首を傾げてから戻って来た
「外から中への狙撃もできそうだ。さすがに中は暗くて見えなかったが、この場所を把握しといてくれ」
「撃つの…?」
「状況によってはな」
極力銃を使わないで済めばいいな…と思っていると、赤井のスマホに着信が入った