第9章 純黒の悪夢
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「リュウ、起きれるか…?」
「ん…」
身体が揺すられ、なんとなく聞こえた声に薄ら目を開けた
はっきりしない視界に目を擦るが、聞こえてきた声は確か…
「ライ…?」
今日は何の取り引きだったかな…
「相変わらず寝起きの悪い奴だ…ライはもういないぞ」
頬を撫でてくれる目の前の人物はライのはずなのに、どこか雰囲気が違う
視界がはっきりしてきたところで周りを見ると見たことの無い部屋にいて、あれ?オレ、確かハロと工藤邸の玄関先で…とじわじわ記憶が夢から戻ってくる
「…えっ!?ここどこっ!?」
ガバッと起き上がりキョロキョロしながら聞くと、ここは工藤邸の赤井が借りている一室だと言う
つまり沖矢昴の部屋でもある
「玄関先で調べ物をしながらウトウトしていただろう?」
そういやそんな気もする
いつ連絡が入るかわからないから無理をするなと言われ、瞼が閉じたところまではなんとか思い出せた
「運んでくれたの?」
「あぁ。抱き上げたらハロ君に怒られてしまったが、話をつけて君をここまで連れてきた」
床やソファで寝させるのは気が引けてベッドに運んでくれたそうだ
それを聞きながらハロに話をつけている赤井を想像して少しおかしくなる
オレがここにいるということは、ハロはちゃんと赤井の話を聞けたんだろうな…
整えられている赤井の部屋の時計を見ると、だいたい1時間ちょっとの仮眠が取れたみたいで、日が昇る時間も近付いてきている
「組織が動き出した…俺達も動き出そう」
そう言われて2人で部屋を出る
玄関に向かうまでの廊下で、オレが寝ている間にキールから連絡があったことを話してくれた
ジン達は今海外にいて、日本に戻り次第大きな仕事があるからと招集されたらしく、招集場所やおよその時間を教えてもらっている
場所は港の倉庫、時間は夕方17時…
NOCリストの件はキールには何も情報が入っていないみたいで、組織から疑われている零も同じ状態かもしれない
零にも既に招集がかかっているかな…
キールが呼ばれたその招集はNOCを始末する為の物ではないかと赤井は予想しているそうで、NOCリストは既に奴らの手に渡っている可能性も高くなってきた
「招集の時間までになんとかしないと…」
「そうだな。公安の方は何か連絡は入っていないのか?」
スマホを確認するが何も連絡はなかった