第9章 純黒の悪夢
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「おじゃましまーす」
工藤邸に来るのもすっかり慣れたな…なんて思いながら赤井の後に続いて家に入る
家主ではない赤井がハロも入ってかまわないと言うけれど、さすがに人の家に動物を上げるのは気が引けて玄関の内側にいさせてもらうことにした
ペット用トイレもちゃんと持って来たし、ちょっとの間だけごめんなさい…居場所借ります…
「ハロ君のグッズが入っていたから荷物が重かったんだな」
「うん、いつ家に戻れるかわからないから、ハロのことどうしても置いて行けなくて…」
シドやいつものお気に入りのクッションやタオル等、普段と変わらない物でハロの周りを囲んでやった
ハロにはここは安全な場所だから安心するよう撫でながら伝えたけど、理解してくれるといいな…
「心配ならここで話すとしよう」
そう言って玄関先に椅子を運んでくる赤井
まだ運ぶ物がありそうで手伝おうとしたけど、冷たいハンドタオルを投げられ首を傾げた
「目を冷やせ。腫れすぎだ」
目の違和感は腫れたせいだったのか…
先に椅子に座らせてもらって冷たいタオルを目に当てる
その冷たさと、何から何まで優しくしてくれる赤井のおかげで、家にいた時の焦りや不安が解かされていく
思考がクリアになってくると、これからどうするかという考えが次々と出てきた
NOCリストを守るには…零を護るにはどうすれば……
「わっ!」
タオルで視界が暗い状態で突然身体が左に引き寄せられ驚く
目に当てていたタオルを外すと、オレの肩を寄せる赤井がいて、見上げれば目と目が合う
「本当に小さくなってしまったんだな…」
頬を触ったり手を握ったり、不思議だと言わんばかりに覗き込んでくる
「な、何を今更…」
「仕方ないだろう、君が縮んでからこうして話せることなく過ぎてしまったんだから」
面影はあるな、と頬をフニフニされる
「もう!これからどうするか真面目に考えてたのに!」
「そう焦るな。奴らはそんなすぐには動かんよ」
工作員の名前はキュラソーといい、そのキュラソーがNOCリストをどのような形で入手していったかまではわからないみたいだけど、あの事故で生きていたとして、組織に戻る時間とラムからの暗殺命令が出るまでは少しの猶予があると読んでいるらしい
「最も、データが通信で送られていては時間の読みが変わるがな」