第9章 純黒の悪夢
風見に連絡を取ったとしても迎えに来て研究室に連れてかれて、場所が変わっただけで待機命令なのは目に見えてる
捜査に加わったら組織と接触してしまう可能性だってある…零はそれを避けたがるから…
『それでいいのか?』
「え…?」
『俺の知っている君はただ身を隠して終わる男ではないと思っていたが?』
もちろんただ隠れるつもりはない
研究室に行っても自分ができることを探そうと思ってたし、零を守る策を考えようともしていた
だけど今の段階でオレにできることは、悔しいけど身を隠すことしかできなくて…でも…
「…本当は捜査に加わって、自分が零をアシストしたいし、組織の思惑を阻止したい!でも、どうすることもできなくて…」
『どうすることもできないだなんて君らしくないな』
もう少し落ち着いて考えてみろと言われたけど、NOCリストが奪われて零の命が危ないってのに、どう冷静になればいいのかわからない
落ち着こうとしても、心がザワザワしていてどうしようもないんだ…
『降谷君からは何と命じられたんだ?』
「荷物をまとめて風見と連絡を取って、身を隠して無事でいて欲しいって…」
『…俺の所に身を隠していれば、無事でいられるだけでなく降谷君を助けに行けると思わないか?』
「えっ…」
『荷物をまとめて風見君に連絡をしたら早く降りて来い』
「はぁ!?」
降りて来いってどういうことだと道路側の窓に走り、ベランダに出て下を覗いた
そこには赤いマスタングが停まっていて、それに寄りかかりながらスマホを片手にこっちを見上げる赤井がいた
「嘘だ…」
『嘘ではない。荷物をまとめて風見君と連絡を取って、身を隠して無事でいれば問題ないんだろ?』
「そういう意味じゃなくて…んもぅ!赤井のバカぁ…」
褒め言葉として受け取っておこうだなんて微笑む赤井は本当にバカだと思った
バカなくらいオレに甘くて、甘やかされてるこっちが恥ずかしいくらいだ
「ありがとう…すぐ行くから」
そう言って一旦電話を切った
荷物といっても元から形跡が残って困る様な物は殆どないし、最低限の物だけボストンバックに詰め込んだ
あとはハロの荷物と、オレの第二の頭脳が入ったタブレットもしっかり持った
「ハロ、零を助けに行くよ!」
「アンッ!」
必ず零とこの部屋に戻って来られる様祈りながら鍵を閉め、ハロと共に家を出た