第9章 純黒の悪夢
「くぅん…」
「ハロ…」
いつの間にか奥の部屋から出てきたハロが膝に乗り、頬に流れた涙をペロッと掬ってくれる
そんなハロを抱きかかえ頬を寄せると、少し気持ちが落ち着いた気がした
「ハロ…零が死んじゃったらどうしよう…」
オレの言葉を聞いて耳をピクッと動かしたかと思うと、急に腕から抜け出し、ポケットを前足や鼻で示した
なんだろう…そこにはスマホしか入れてないけど…
…あ、スマホ!
「もしかして、連絡しろって言ってるの?」
「アンッ!」
そうだ、荷物をまとめたら風見に連絡しなくちゃいけない
でも荷物の前に状況だけでも聞いておこうかなと連絡先を出した時、リストの中から『赤井』の名前が目に入った
『俺達もNOCリストを守らなければいけない』
前に赤井がそう言っていたのを思い出した
今回のことももしかしたら何か掴んで動いてるかもしれない
あれから連絡をした事はなかったけど、キールからNOCリストの件がFBIに伝わってるとなれば何かしら情報は掴めるかも!
赤井の名をタップし、恐る恐るスマホを耳に当てた
「……」
しかしコール音だけで電話に出る気配はない
情報だけでなく、赤井なら零を助ける手段を持っているかもと望みを掛けたけど…やっぱり考えが甘かったか…
とにかく必要最低限の物をまとめて風見と合流しよう
まだオレにもできることがあるかもしれないし…状況を聞いて何か策を考えないと…
ハロの頭を撫でて立ち上がったその時、ポケットにしまったスマホが振動した
慌てて取り出し画面なんかろくに確認もせず電話に出る
「もしもしっ!?」
『すぐに出られなくてすまない』
「あ…かぃ…っ」
耳元で聞こえる赤井の声に緊張が解れる様に安堵を感じ、おさめたはずの涙でまた視界がぼやけていく
『…ん?NOCリストのことだろう?』
「うんっ…どうしよ…零がっ…」
『零…?あぁ、降谷君か。彼は今後どうするつもりなんだ?』
そう聞くと言うことは、赤井はNOCリストが奪われたことを知っていて、その件で零が動いてることも知っている
やっぱり今回の件、FBIも動いている…
「組織に呼ばれる前に工作員を捕まえるって出て行った…オレは念の為身を隠せって…」
『そうか。捜査には加わらないんだな?』
「うん…今回の件、工作員に潜入された時点で捜査から外されてるから…」