第9章 純黒の悪夢
「えっ…」
予想もしていなかった言葉に思考が停止する
ここを出ろって言った…?
「ま、待って…意味わかんない…」
「準備ができたら風見に連絡をして、後の事が決まるまでは研究室に身を隠していて欲しい…」
ここを出て身を隠すなんて聞いたら、相手は組織だとすぐにわかった
そして今回のNOCリストの件で最悪な事態が起こっていることも言われなくてもわかった
でも、わかっていても理解したくない自分がいて、きっと自分の思い込みだと思って恐る恐る事態を確認する
「一体…何が起こってるの…?」
「NOCリストが…奪われた…」
「…!」
工作員を現行犯逮捕する為にサーバルームに侵入した所を風見と部下とで追い込んだらしい
だが彼らを突破し、廊下で待ち伏せをしていた零さえも突破し、警察庁の窓を破って飛び降りた工作員は車を奪って湾岸線へ逃走
すぐに車で追うも最終的には車ごと高架下へ落ち、行方不明となっているらしい
「じゃあ!NOCリストが工作員から組織内にリークされたとは限らないってことだよね!?もしかしたら記憶媒体ごと燃えてるかもしれないし!まだ確実に奪われたって…っ!」
零の肩を押し俯く零に向かって夢中に言ったが、零の片手が頬を包み、目と目が合い、言葉が止まった
零の目が…覚悟を決めた目をしていた…
「NOCリストが組織内にリークされてない証拠も、記憶媒体ごと燃えた証拠も、ないんだよ…」
「…わかってるけどっ!」
「もし僕がNOCだとリークされていたら、まずは僕が消され、徹底的に探られた後に周りの人間も消されてしまう。この家もいずれバレてしまうだろう。だから、叶音は今すぐここから離れてくれ…」
言葉にしちゃいけないと思っていたのに、本人から消されるとか、そんなさらっと言わないで欲しかった
零が消されるとか…そんなこと…
「NOCリストの行方を確かめるにはあの工作員を捕まえて吐かせるしかない。だが僕はもう降谷零としては動けない。公安としてのことは風見に任せてあるから、叶音は組織から身を隠すことを考えて欲しい」
「身を隠さなきゃいけないのは零だよ!?」
「そんな事をしたら自分がNOCだと認めたことになる!叶音ならわかるだろ!?」
強めに言われ、目からは我慢していた涙が零れ落ちた
「わからない……わかりたくないっ…」