第9章 純黒の悪夢
そう願う時に限って何かしらあるものだから、あまり考えない方がいいのかな…
零や風見に連絡を入れたいが、もし組織に動きがあったなら邪魔になってしまう
情報や連絡を待つしかできないこの状況がもどかしい!
「自宅待機嫌だぁぁぁー!」
スマホを片手に畳にゴロンと大の字になると、その瞬間、その片手に長めの振動が伝わり、勢いよく座り直した
画面には想い人の名前が表示されており、迷わず通話ボタンをタップする
「もしもし!?」
『叶音、家にいるな?』
「うん!ちゃんと自宅待機してる」
『良かった。大事な話があるから待っててくれ、もう着くから』
「え…?」
何かあった?と聞こうとしたが、通話を切られてしまう
大事な話なんて言われたら、嫌なフラグが立っているようにしか聞こえないじゃないか
NOCリストの方で何か動きがあったのだろうか…そして湾岸線の事故とも何か関係があるのだろうか…
待っててくれと言ったんだから今からココに帰ってくるのだろうけど、いてもたってもいられず玄関までの廊下を行ったり来たりしてしまう
もう着くってどのくらい?
何度もスマホの時計を見るも数字は変わらず、たった60秒に途方に暮れる
少し落ち着かなくちゃと、玄関先に小さくしゃがんでドアを見つめると、あぁ、ハロはいつもこんな風に眺めて待っているんだなぁと現実逃避もしたくなってきてしまう
待つという時間がこんなにも長く感じたのは初めてかもしれないな…
「はぁ…」
溜め息をつきながら両膝に顔を埋めると、外からこちらに近付いてくる足音が聞こえた
零…
そう思って顔を上げると同時に目の前のドアが開き、待ち侘びていた人物が息を切らしてなだれ込み、勢いのまま抱きしめられた
「れ…い…?」
「叶音…っ」
密着した零からはなんとなく火事場の臭いがして、やっぱりあの事故現場にいたんじゃないかって思えた
「大丈夫…?怪我とか、してない?」
「……」
抱きしめたまま何も発さない零に何があったのかと聞くには恐ろしくて、そのまま零の背中に回していた手で背中を摩る
何があったのか聞きたいけど、聞いたらおしまいな気がする
でも意を決して聞いてみようとすると、抱きしめられている腕にぎゅっと力が入り、零の方から話し出してくれた
「叶音……今すぐ最低限の物をまとめて…ここを出るんだ…」