第9章 純黒の悪夢
〈9章純黒の悪夢〉
「自宅待機命令…?」
研究室に暗い顔をしてやって来た零と風見
その顔に何かあったんだろうと察しはしたが、零から告げられた突然の待機命令に首を傾げてしまった
「近々組織が動く可能性が出てきたんだ」
「それって、例のNOCリスト件…?」
「あぁ…」
来葉峠の一件後に情報を得た、組織がNOCリストを狙っているという案件…覚悟はしていたが、ついに組織に動きが…
「でも何でオレ、自宅待機なの?」
NOCリストが狙われているとわかってからずっとオレがネットワークを解析したり、セキュリティのチェックをしたり、情報局と公安の間を取り持って動いていたのに…組織が動く直前で外されるとか…
「すいませんリュウさん…実は、既に警察庁内に組織の工作員と思われる人物が忍び込んでいるかもしれないんです」
「組織の人間がいるかもしれない場所に、叶音を居させる訳にはいかない」
しかもここは子どもが居るべき場所ではなく、いつどこで工作員がリュウに気付き、組織に情報が流れるかわからない
念の為オレはここにいない方がいいと零が説明をしてくれた
組織がもう既に内部にいる…
零の言うことはわかるけど、ここで自宅待機ではNOCリストを守る為に今までオレが動いてきた意味って…
命令なのはわかっているのに、心のどこかで受け入れたくない自分がいて、ひねくれた言葉が口から出てしまう
「公安の機密情報が漏れてしまっては最悪な事態になりかねない。つまり今回はオレの存在がマイナス…だったらオレはココにいない方がいいね…」
「いや!リュウさんがマイナスってことは…」
気を遣ってくれてありがとなって笑って見せると、零に腕を引かれ抱きしめられる
「今回の件、誰よりも解析や対策をして動いてくれていたのは叶音だ。もちろん解決するまで手を借りるつもりだった。だが叶音の存在が組織に流れるようなことは絶対に避けたい。僕はただ叶音を護りたいだけなんだ…マイナス要素とか思わないでくれ…」
「オレだって零を護りたいだけなのに…」
「なら、家にいて欲しい…」
その言い方はずるいよ…
でも零にとってそれが一番動きやすいなら、そうするしかない…零の邪魔にだけはなりたくないからさ…
「わかった…家で大人しくしてる」