第8章 嘘の裏側/緋色シリーズ
「今ちょうど連絡しむぅっ…!」
まだこっちが話している途中だというのに走って来たそのままの勢いで抱きしめられ、顔ごと零に包まれた
倒れそうになるもしっかりと腕にホールドされているから心配はなく、むしろ零の胸に顔が密着する程の強さで息ができない
「無事で良かった…」
「ぷはっ…ただいま!」
零の腕から見上げる様に顔を出し、やっと見えた零の顔に今日の緊張が一気に安心へと変わった
ニッと笑って見せればそのまま抱き上げられ、本庁の裏口へと向かって歩き出す
「自分で歩くよ!?」
「こうしていたいんだ、気にするな」
もうこんな時間だから当直の刑事くらいしかいない
まぁ残っていたとしたらヤマに当たっている刑事くらいかな…
「実は来葉峠に行った部下達がリュウを待っているんだ」
あ、ヤマじゃない刑事も残ってた
しかもオレの為に
「先に上がって良かったのに…」
「僕もそう言ったさ。でもFBIに連れて行かれた天使が心配でひと目見ないと帰れないってさ」
嫉妬しちゃうよ…なんて笑いながら言う零
でもそこで強引にでも帰宅させなかったのがこの優しい上司である
普段は厳しく無茶苦茶言うのに、きちんと部下達の気持ちを組んでくれる…だから部署のみんなは零に着いて行こうと思うんだろうな…
「心配掛けちゃったね」
「本当だよ。連絡入れるって言っておいて『元のオレに話があるみたいだから行って情報掴んでくる』ってそれ以降音沙汰無しとはな」
2人用の通信は切れてるし、いつ帰ってくるのかもわからないし、下手に電話できないし…などぶつぶつ文句を並べられてしまった…
「ごめんなさーい……でもバッチリなタイミングで迎えに来てもらえて良かった!」
「当たり前だ!何の為のGPSだと思っている」
GPS…!忘れてた!
「えっ…じゃあオレがどこに行ってたのかもお見通しだったってことだよね…」
「赤井に連れて行かれた先が工藤邸ということは、赤井と沖矢昴は関係者で、やはりあの江戸川コナン君が今回の件に関わっていたということだろう?」
さすが…
「そういうことなんだけど、詳しい話は研究室で話すね」
今回の真相と、組織の新情報、移動中に話すことではないのでまた後でという事にした
それよりも今はまず部下達に会って、早く帰宅させないとだな…
エレベーターに乗って最上階に近い部署を目指した
