第3章 始動/小さな探偵達
「し、新一兄ちゃん?」
「え、工藤新一ってコナンのお兄ちゃんなの?」
いやいや違くてと否定をしながら説明をしてくれた
考えてみれば苗字も違うし、兄ちゃんなんて実の兄じゃなくても使うか
「へぇ~、じゃあやっかいな事件に巻き込まれてるから、なかなか帰ってこないのか…」
「そうみたい」
「でもやっかいな事件ってなんだろうな。大人が子どもになっちゃう漫画みたいな事件だったりして?」
「!?」
なーんちゃって!と笑って見せたけど、ただならぬ空気が走ったのがわかった
そっちもアハハと笑って誤魔化してるみたいだけど
「でもリュウは日本に来てそんなに経ってないのに、日本のこと詳しいんだね!」
「まぁね!アメリカにいたって言っても生まれは日本だし、日本のニュースは欠かさずチェックしてるからさ」
「へぇ~。日本のこと好きなんだね!」
話を逸らされた
もう少し工藤新一について聞きたいけど、初対面でこれ以上は無理かな
会えて反応見れただけでも良しとして…
「おや?お客様ですか?」
「あ、昴さん」
「…!」
沖矢昴…工藤邸に住んでるってのはリサーチ済みでそのうち接触しようと思っていたけど、まさか会えるとは
それにしても玄関から入ってきたんだろうけど、全く気配を感じなかった
なんか鍋持ってるし
「はじめまして、音月リュウです、おじゃましてます」
「おぉ、昴君か、また夕飯のお裾分けかな?」
奥の部屋からオレのシドとスケボーを抱えて博士と灰原哀が戻ってきた
また…ということは、頻繁に出入りしているんだろうな
「はい、クリームシチューを作りすぎてしまったので是非と思いまして。君もいかがですか?」
「オレも?」
まさか会話を振られると思わなくてビックリしたけど、それから直してもらったシドを受け取って、沖矢さんのシチューを小分けしてもらい、今日は帰ることになった
「今日は本当にありがとうございました!」
少年探偵団達にも見送られながら阿笠邸を後にし、風見が待っているであろう場所まで早足で歩く
もちろん盗聴器の受信機を耳に付けて
『改めてAPTX4869の使用者リストを見たけど、名前だけじゃ特定は無理よ。みんな死亡ってなってるし』
『やっぱり同じ名前は使わねぇか…』
あのリストまで辿り着ける小学生っておかしいだろ!
やっぱりただの子どもじゃない…