第8章 嘘の裏側/緋色シリーズ
車を回してくると言い沖矢さんは客間を出て行く
またあの車に乗るのかと少し憂鬱ではあるが、手段は限られているから仕方がない
コナンがいては話せない内容なんだろうから、素直に沖矢さんに送ってもらうことにした
「刑法聞いてなんとなくわかっちゃったけど、赤井さんに何されたの?」
「…聞かなかったことにしといてください」
「リュウと赤井さんって…そういう関係?」
頬を赤らめながら聞いてくるコナンに全力で否定をする
「違う!絶対!そんなんじゃない!」
組織時代に一度だけ取引でそんな関係にならざるを得なかった時もあったけど、断じてそんな関係ではない!
コナンには言えないけど、オレには零がいるんだから!
「あ、もしかして安室さんが昴さんに『本当は貴方を一発殴らないと気が済まないんですが…』って言ってたのって、そういうこと?」
「え、透兄ちゃんがそんな事言ってたの?」
ここから撤退する時に零が言い残していったらしい
ってことはもしかしたらここの家主、工藤優作さんを殴ってたかもしれないってこと!?
「殴ってないよね…?」
「うん、殴られなくて良かったよ」
アハハと苦笑うコナンにオレも苦笑いをした
殴ってなくて本当に良かった…
玄関に向かうと門の前に例の車がちょうど着いたところで、靴を履いてコナンに振り返る
「あのさ、刑事としてこれだけは言っておこうと思うんだけど…」
「ん?」
「新一君は頭のキレる名探偵かもしれないけど、未成年で民間人…まだまだ守られる存在で、本当は組織に関わるなって言いたいところなんだ。でもこんな姿になってオレも気持ちわかるからさ、無茶だけはしないでってだけ言っとくね」
キョトンとした顔で聞いていたが、わかってくれたのかニッと笑って礼を言われる
「サンキューな!」
「どういたしまして。でも本当に危ないと判断したら、保護させてもらうからね!」
「気を付けまーす…」
じゃ、と言って工藤邸を出る
これからはコナンに盗聴器や発信機を付けられることはなくなるだろうし、駆け引きせずに接する事もできそうだ
少し気持ちが軽くなったかなぁなんて思ったけど、やっぱりこの車の助手席のドアを開けて重みを感じる
「この車、嫌な思い出しかないんだけど」
「ではこれから良い思い出作っていきましょう?」
彼氏かっ!!
