第8章 嘘の裏側/緋色シリーズ
「残念だけどその推理は的外れよ」
頭を撃ち抜かれて車ごと焼かれた赤井の遺体の指紋と、探偵ボウヤの携帯に残っていた赤井の指紋が一致、それを確認したのが日本警察で、確認させたのはFBI…
オレが零から聞いた話をベルモットも口にする
「どうして焼死体から指紋が採れたんですか?」
「耐火加工されたズボンのポケットに手を突っ込んだまま焼かれたからよ…」
自身がショットガンで撃たれた時も片手はポケットだったと、赤井のことをそういう男だと言う
「だが、後で指紋が採取できるようにわざと遺体の手を入れていたとも考えられますよね?」
疑う零にベルモットは赤井が撃たれた時の映像を観てみるかと提案する
「あの男、撃たれる前にこう呟いたのよ…『まさかここまでとはな』って」
表の顔で女優をしていたベルモットは演技ではなく心の底から出た言葉だったと言う
まさか…ここまでとはな…
当たり前に考えれば不運を嘆いているようにしか聞こえないが、零が同じ言葉をボソッと口にした時にその裏側に何か隠れているのではないかと思った
「まぁ、証明してみせますよ…僕の推理が合っているかどうか…ぐうのねも出ない状況に追い込んでね」
居場所を掴んでいるのかと聞かれまだと答える零だが、きっとベルモットや組織に邪魔をされたくないからそう言っているに違いない
だって零は沖矢昴が赤井秀一じゃないかと早い段階で辿り着き情報を集めていた
今から追い込むのは沖矢昴…
「着きましたけど、ここでいいんですか?」
車がどこかで停車した
「えぇ、今から取り引きがあるの。あなたといる所を見られたら台無しになるでしょ?」
どこに着いたかはわからないが、ベルモットはここで降り、今から会う取引相手はきっと男なんだろうってことはなんとなくわかった
「お目当ての亡霊さん見つかると良いわね」
そう言い残してベルモットは車を降りて行った
バタンとドアが閉まり発車する
零からの合図があるまではそのままでいないと、もしかしたらベルモットが車内に何か残しているかもしれない
そう思ってじっと待っていると、赤信号で止まったのか背中をトントンされ、完全に作った口調で声を掛けられた
「そろそろお家に着くけど、起きれるかな?」
まだ他人を装った方が良いんだろうなと思って身体を起こしながら子どもを演じる
「んー…あ、お兄さんおはよ…」
