第8章 嘘の裏側/緋色シリーズ
夕陽が沈みかけ辺りの色も変わり始めている中、買い物袋の中身なんてお構い無しに夢中に走り家を目指す
途中で散歩中の犬に吠えられた気もしたけれど、周りの状況が頭に入らないくらいさっきの出来事が思い出され気分が悪くなる
沖矢さんがどうこうというよりも、零以外にあんなことをされたというショックが大きい
早く零に会って自分ではどうにもならないこの気持ちを落ち着かせたいけど、零が知ったらどう思われてしまうのか、このまま会って大丈夫かという不安も出てくる
気付けばあっという間に玄関に辿り着き、鍵を開ける
今日に限って零が早く帰ってきているとかは………なかった
ドアを開けると玄関に靴はなく、いつもと同じくハロがしっぽを振って待機している
「ただいま…」
「クゥン…?」
ごめんハロ…
いつもなら抱きかかえてただいまをするが、今はそれどころではない
足早にハロの横を通り抜け、キッチンのテーブルに乱雑に買い物袋を置き、洗面台に向かう
鏡に向かって襟を引っ張り、気掛かりな首元を確認した
「最悪…」
鮮やかに浮き出る痕にガッカリした
それに付けられたばかりだからか、思った以上に赤みが強く驚いた
「消さなきゃ…」
服にもまた沖矢さんの匂いが移ってしまっていたら大変だと思い、急いで脱いで洗濯機に投げ入れる
首に残る感触も消したくてそのままお風呂場に直行し、シャワーが温まるまで泡立てたボディタオルで首筋を思い切り擦った
消えろ…消えろ…沖矢さんとは何もなかった…!
そう何度も唱えて鏡を見るも…
「消えない…よな…」
消えるどころか擦った箇所に赤みが出始める
おまけに鏡に映る自分の目からは涙が溢れそうになっていて、そうなる前に温かいシャワーを頭から被った
何も泣く程のことじゃなかもしれないけれど、零以外にされたことや、仕掛けようとして逆にやられたこと、抵抗をしても全く歯が立たなかったこと、それらが思っている以上に精神に攻撃をしてきている様だ
そして痕が更に追い打ちを掛けてくる
それに二徹間近で疲労もかなり溜まってるし…
あぁそうか、こんな気持ちになるのは寝てないからだ
そういうことにしておこう
何かに理由を付けないとダメな気がして寝不足のせいにし、シャワーを済ませ、ハイネックを着て首元を隠して布団に潜り込んだ
目が覚めたら、さっきの事はどうか夢であって欲しい…
