第8章 嘘の裏側/緋色シリーズ
「日本には教育を受ける義務というものが…いや、君にする話ではありませんね。この手の話は透兄ちゃんの方が詳しいと思いますので聞いてみてください…と言っても、君が学校に通わなくても良い特別な何かがあるならお節介な話でしたけどね」
度々何かを知っているかのように話す沖矢さんの様子に緊張感が走る
「あ、すいません…こんな硬い話をするつもりはなかったんですが…」
表情に出さなかったつもりだが緊張を見破られてしまったのか、沖矢さんが空気を変えようとしてくれた
「あの、オレを車に乗せてまで話したかったことってなんですか?」
「この前発信機を取ってから君との間に壁ができてしまった様だったので、少しでも仲良くなれたらいいなと思っただけですよ」
壁ができるも何も、沖矢さんが怪しすぎるんだから仕方がない
赤井なのか、そうじゃないのか、だとしたら一体何者なのか…疑惑しかない
「前にも言いましたが、そんなに警戒しないでください」
警戒しないでって?
じゃあ表向きに警戒解くから、そのハイネックの秘密教えてくれよな…
「沖矢さんごめんなさい…発信機とか難しいこと知ってるから、沖矢さんのこと怖い人なのかなって思って…映画に出てくる様なスパイだったらどうしよって思って…」
甘えん坊の子どもの様にしゅん…としながら沖矢さんの方に寄り、ピタリと身体をくっつけ見上げる
おや…と驚く沖矢さんも優しくオレの頭を撫でてくれて、今ならいけるんじゃないかと思った
ハイネック、めくってやる…!!!
「沖矢さん、悪い人じゃないんですよね?」
「えぇ、君の味方ですよ」
ニコッと微笑む沖矢さんの膝に片手、肩にもう片手を添えて嬉しいと言わんばかりの笑顔を振りまいた
首元までもう少し…!
「オレ、沖矢さんともーっと仲良くなりたいなぁ…」
「もーっと、ですか?」
首元に近付こうと腰を浮かせると、沖矢さんの片手がオレを抱きかかえる様に背中に回り支えられる
もう片手は膝に添えていたオレの片手でぎゅっと握り、これで手は封じたはず…
「リュウ君?」
自由に動けるのはオレの片手のみ
「沖矢さん…」
下から煽る様に目を合わせてから、気を逸らせる為にフッと視線を横に流す
それと同時に余る片手を沖矢さんのハイネックへと伸ばし、人差し指を掛けた
「……!」
「……!?」
あれ…?
