
第8章 嘘の裏側/緋色シリーズ

「あぁ、コナン君に聞いたんですよ。家の前に見知らぬ車が停ることが増えたので、博士の家に誰か出入りしているのかと思いまして」
オレの手を引き歩きながら沖矢さんが言うには、オレの迎えの為に一緒に住んでいる人が来てくれているとコナンから聞いたらしい…
そっか、コナンか…
「でも妙なんです」
「妙…?」
「君が阿笠博士の所に来ていない日も、同じ車が停まっていることがあるんですよ」
最近は頻繁で…と言うが、きっとそれは零が沖矢さんの動向を探る為に張り込んでいるのかもしれない
わざわざ目立つ様にしているのも、もし沖矢さんが赤井だったら、本人かFBIが仕掛けてくるかもしれないと踏んで、そして仕掛けてきたらそれこそ沖矢昴に秘密があると言っているようなものだからとでも考えているのだろう…
「透兄ちゃんは探偵もやってるから、もしかしたら依頼でも受けたのかなぁ?」
浮気とか何かやらかしたの?と冗談で聞くと、恋人はいないときちんと返されてしまった
「その透兄ちゃんとやらに言っといてください。何の調査か知りませんが、私を探っているのなら時間の無駄ですよ、と」
「うん…」
自分には何も無いと言っているんだと思うけど、オレにはどうしても赤井秀一に近付くなと言っている様に聞こえてしまう
にしても本当に沖矢さんは赤井なのだろうか?
本当に別人の様だし、ライの時はこんなに穏やかに話すタイプではなかった
もっと荒々しくて、無口で、一匹狼な感じで、でもお兄ちゃんな一面も時々見せてくれて…
「さ、着きましたよ」
「…あ、この車」
手を引かれ辿り着いたのは、スーパーの駐車場の端に停めてあった沖矢さんの車だった
赤いスバル306…
毛利探偵事務所で殺人事件があった日、オレとコナンと犯人を乗せた車を追ってきた、珍しい車と同じだ
「見覚えでも?」
「ううん!なかなか見ない車だなって思って!」
そうか、あの時路地裏からずっとついてくるなと思ったのは、沖矢さんがコナンを追っていたからか
知り合いが乗っていたのがわかっていて事故紛いなことが目の前で起こったら普通は駆け寄るだろうに、必要以上に関わらない様に去ったその判断、やっぱりただの大学院生ではなさそうだ
「少々肌寒いので車内で話しませんか?」
そんな大学院生がわざわざ子どものオレと話したいことって何なんだろうか
このまま乗っても大丈夫か…?
