第8章 嘘の裏側/緋色シリーズ

じゃあ撃つ側の協力が得られたとして、死体のすり替えはどうする？
都合良くすり替える死体を手に入れることなんてできるんだろうか…

｢キールが水無怜奈の名前でアナウンサーをしていたのは覚えてるか？｣
｢うん…そういえばアナウンサーの引退直前に杯戸病院に入院してたって噂になってたよね｣

｢水無怜奈は本当に入院をしていて、それを保護していたのがFBI。そして水無怜奈を探る為に組織が送り込んだスパイが楠田陸道…奴は今も消息が掴めていない｣

楠田陸道…確か病院の近くで楠田の破損した車が見つかったと、零が高木刑事から聞いたと言っていた
車内には1mmに満たない拳銃による物と思われる飛沫血痕が残っていたって…

拳銃による血痕の残された車は楠田の…
赤井の殉死は拳銃によるもの…

楠田…赤井…拳銃……

｢赤井秀一が拳銃で頭を撃ち抜かれて車ごと燃やされたその遺体は、楠田陸道の遺体だった可能性があるんじゃないかって思ってね…｣

やっぱりそう考えたか
でもそれはまだ可能性の話で、確信的な証拠がない

｢楠田の死は明確にされていないし、焼死体と赤井の指紋が一致したんでしょ？その偽装の仕方も解明しないといけないね｣

楠田の消息がわかるのが一番手っ取り早いが、今まで不明となっていたんだから見つけるには根気が入りそうだ
そして、もし楠田が死亡していたのなら、楠田がどの様に死亡したのかも調べる必要がある
赤井は頭を撃たれたんだから、楠田も頭に銃痕が残るような死に方をしていたはずだ
それが焼死体と酷似していたら、この可能性は一気に高くなる

｢破損車両の飛沫血痕の状態がわかれば、身体のどこを撃ち抜いたのか検討が付くと思うんだ。もし自殺だとしたら頭の可能性も高いけど、これも確かじゃない。鑑識官がどの程度記録を残しているかにもよるけど…もっと詳しいところまで調べ直せるかもしれない｣
｢あぁ、風見に頼んだ事件の資料が集まっていればすぐにでも調べ直したいんだ｣

そうだ、風見にも動いてもらってるから、これは早めに検証できそうだ

｢資料が集まった時点でオレが先に確認しててもいい？｣
｢もちろん。日中の本庁でのことは任せるよ。明日は朝一で管理官の所に行くが、滞在はできないからな｣

そうと決まれば今すぐにでも調べたいが、時計はもう深夜2時に近づいている
でもあと1つだけ聞いておきたいことがある