第8章 嘘の裏側/緋色シリーズ
零はありがとうと微笑むと、テーブルに両肘を付き両手を組んで真剣に話を始める
「叶音は……沖矢昴が赤井秀一と同一人物だと言われたらどう思う?」
「………んん?」
いや、可能性の話であることはわかってるんだけど、想定外すぎて思考が止まった
誰が、誰と一緒だって…?
「えっと…それだけ言われたらサッパリわからないけど、そう考えた理由があるんだよね?」
「あぁ。ただ、本人を問い詰めるにはまだ確信的な要素が不十分でね…」
ベルツリー急行で赤井の姿を見た時から着々と調べ上げていたのは知っていたが、どこで沖矢さんが赤井だと思ったのだろうか
見た目は赤井とは全く違うし、声も雰囲気も、まったくの別人としか言えないじゃないか
「赤井が頭を撃たれた映像の記録はしっかり残っていて、どう見ても確実に撃たれている映像だった。そんな映像がありながらも生きているとしたら、考えられる事は何かな?」
「撃たれた様にフェイク動画を作ったとか……いや、でも死体はあがってるからそれはないか…」
組織や刑事課からの情報では、赤井は撃たれた直後に車ごと燃やされている
消火後に発見されたのは焼死体ではあったが、右手をポケットに入れたまま焼かれていた為辛うじて指紋が取れ、それが生前の赤井の物と一致したと…
「赤井が撃たれた映像は本物さ。映像だけでなく、その現場をジンが遠くから見張っていたとベルモットが言っていたから間違いない」
映像は本物…
赤井は撃たれている…
死体はから赤井の指紋…
動かぬ証拠があるのに、これをどう疑えば…
…まさか…!
「実際に起こったこと自体が、フェイクだったってこと…?」
半信半疑で恐る恐る言ってみると、そうだと言わんばかりに口角を上げる零
「さすが元鑑識、可能性を考えるスピードがやっぱり違うな…」
「そんなことないよ…」
頭の回転で言ったら零の方がすごいのになぁと思いつつも、褒められた照れを梅昆布茶を飲みながら隠した
「偽装する為には、ある程度条件が揃わないと難しいだろう……あのジンもいるんだからな」
「死体役の確保と、撃たれて死んだと見せ掛ける為のトリック準備、あとは…撃つ役との協力体制!!」
確か撃ったのはキールだったはず…
「ってことはキールも…!?」
「NOC、又は組織側の人間だが赤井に協力せざるを得ない状況だったか、だな」
