第8章 嘘の裏側/緋色シリーズ
「梅昆布茶、飲む?」
「うん。でもオレがやるから零は着替えてきて」
席を立ってコンロに向かう零を止めて着替えを促した
キッチンを使う時は零が作ってくれたオレ専用の台を出し、それに乗ってヤカンに水を入れて火にかける
沸騰するまでの間に湯飲み茶碗を出し、梅昆布茶の粉をセットし準備は万端である
「お湯、多めに沸いてるか?」
「あるよ?」
スウェットに着替えて戻ってきた零は返事を聞くと冷蔵庫を開け、豆腐や乾燥わかめを出し何やら夜食を作り始めた
お湯も沸騰し先に梅昆布茶を作ると、余ったお湯を豆腐に掛け、レンジに入れた
お湯も使っているから水分が抜けない程度の気持ちの温めで良いらしい
「何作ってるのー?」
「夜中に食べても低カロリー・低糖質なやつだよ」
半分こすれば更に低カロリーだと、チン♪となったレンジから取り出されたのはわかめ入り湯豆腐だった
「梅昆布茶もあるから味付けはわかめの塩っけだけでも十分だけど、ポン酢も一滴…」
なんとなく小腹が空く夜中1時にはありがたい
半分ことは言うが身体の質量を考えて3分の1だけ皿に取り分けてもらい、お互い席についた
「「いただきます♪」」
夜中に食べるのはなんとなく特別な気がして、更に零が作る料理は簡単な物でも本当に美味しいから幸せな気分になる
「本当に美味しそうに食べてくれるな」
「うん!だって美味しいもん♪」
さてさて、夜食に夢中になって業務報告を忘れてはいけない
「…管理官から聞いてると思うけど、ゼロのサーバーに外部からアクセスされた形跡があったみたいなんだ」
アクセス元までは特定できないように細工されてたみたいで、形跡を辿れる所まで辿って行くと、どうやらNOCリストを探る様な動きがあったらしい
今回はそのリストに辿り着く前にウチのセキュリティで阻止できたみたいなんだけど…随時更新されているサイバー攻撃への対策をいくつか突破して来たということは、また新しい手法のウイルスやネットワークルートが出てきたのだろうと、そちらは情報局がすぐに解析をして対処してくれているそうだ
「僕のいる組織だけでなくNOCリストを狙おうとする組織や資産家は数多くあると思う。でも珍しいな…そこを狙って攻撃してくるだなんて…何か余程の事があったのか…?」
「それを調べる為に各潜入捜査官に伝達して、各々動きを確認しているみたいだよ」
