第8章 嘘の裏側/緋色シリーズ
少し悪そうな顔が見えた沖矢さんに、沖矢昴がオレの存在を知った組織の人間だったら…と零に言われたのを思い出した
APTX4869の幼児化を知り、工藤邸に住みながらコナンと哀ちゃんを見張っていて、そこにオレがやって来たからこの上ないチャンスとか思って接触し始めているのではないだろうか
でも宅配車事件の時に見せたコナンの沖矢昴に対しての信頼は本物だと思うし、コナンが信頼しているのなら組織の人間ではなさそうだ
なんなら工藤新一とコナンの関係性も知っていそうだったし…
でもだからといってオレについた発信機を外してくれる義理はないはずだ
ただ単に弟のように可愛がっていた人と似ているだけでここまで親しくしてくれるのだろうか
何なんだこの人…
「電話、鳴ってますよ?」
ポケットから聞こえる振動になかなか出ないオレを気遣って言ってくれた様だが、電話に出る事よりも沖矢昴が気になって仕方がない
念の為確認すると着信は風見からで、きっと待ち合わせ場所に着いたという連絡だろう
「出なくて平気ですか?」
目の前で出て何かを探られては困ると思って着信を切った
風見なら何かを察してくれるはず
「出なくても、大丈夫です…」
「フッ…そんなに身構えないでください。君の敵ではありませんから」
敵ではない…そんなこと言われたって何一つ情報がないんだ、信じようにも無理がある
「発信機…取ってくれてありがとうございました」
「いえ。それをつけたままでは困ってしまうと思っただけですから」
確かにあのまま本庁に向かったらコナンに警察側の人間だとバレてしまっていたから助かったんだけど…
「それより早く行かないといけない場所があるんじゃないですか?」
「う、うん…」
探りたいことはたくさんあるけど、沖矢さんのことは一先ず持ち帰って零に相談してからの方がいい気がしてきた
風見も待っているし、この流れで帰った方が自然だろう
「今度はゆっくりいらしてくださいね」
にっこり見送ってくれる沖矢さんにまた来ますとだけ残して、足早に工藤邸を出た
沖矢昴について気になることは増えてしまったけど、本庁に着くまでには気持ちを切り替えないと…
「ごめん遅くなった」
「問題ないです」
風見の車に乗りすぐに盗聴器の類を調べ、大丈夫な事を確認してから本庁へと車を出してもらった
