第8章 嘘の裏側/緋色シリーズ
一体何がどうなったら手が滑って鍋の蓋がフリスビーされるのだろうか…よくわからないけれど、飛んできた蓋を拾って汚れをはらってやる
「怪我はされてないですか?」
「あ、はい…大丈夫です」
怪我をしたとして、鍋の蓋が飛んできて…なんて理由嫌だけどね
「昴さん今日は何作ってるのー?」
「肉じゃがですよ」
直前までピリピリと話をしていたコナンがもうすっかり幼さ全開で沖矢さんに話掛けていて、さすがオレより幼児化歴が長いだけあって切り替えが早いなと感心してしまう
「後で持っていきますね!リュウ君もいかがですか?」
「今日は気持ちだけもらいます!」
完成まではまだ時間がかかりそうだったし、何より肉じゃがを持っては管理官の所になんて行けない
いや、意外と喜んでくれたりして…なんて思った瞬間にあの強面が脳内を過ったので、頭を振って考えなかったことにした
「お手数掛けてしまうのですが、蓋を届けてくれませんか?」
火から離れられなくて…と困った様に言うから仕方ない、帰るついでに渡してこよう
「今行きます!」
沖矢さんにそう言って、コナンのいる窓から部屋の中を覗く
「哀ちゃんごめん!急いで帰らないといけなくなっちゃって…また今度手伝わせて!」
「一緒に服用した解毒剤の情報を持ってきてくれるなら許してあげるわ」
うわぁ…こりゃ早くなんとかしないといけないな…
そして横でムスッとしている名探偵もなんとかしなくては
「話したいことはいっぱいあるんだけどさ…ごめんな?」
「何かあったんだろ?その情報で許してやるよ」
哀ちゃんに乗っからなくていいし、オレが困るのをわかっていて言っているんだろ絶対
「オレも行ってみないとわからないんだ。それと…あんまりオレのこと知り過ぎると、味方でいられなくなっちゃうかもしれないから、程々にね」
オレはそういう立場だから…と付け加えておいた
零や管理官の許可で動いているから、もしコナンが公安に近付きすぎてしまったら、接触を禁止されることだってある
もしくは利用する為に敵にならなきゃいけないことだってあるかもしれないから…
「組織を追う為に別のヤバい組織にいる訳ではないよな?」
「うん、ちゃんとした組織だよ」
心配ありがとな、と片手で挨拶をして阿笠邸を出る
鍋の蓋を持って路地に出るのは恥ずかしくて小走りで隣りの家に向かった
