第8章 嘘の裏側/緋色シリーズ
「このくらいでどうですか?」
適温まで冷めたであろうレンゲをこちらに向けてくれたのでそれをパクっと食べに行く
「ん、おいひぃ」
やっと口に入ったお粥に満足していると、その横でいつまでも同じポーズのままでいる風見が何か言いたそうだった
「風見?大丈夫だよ、美味しいよ?」
「っそ、そうではなく!リュウさん何の躊躇もなく食べるから、その…照れるというか、なんというか…」
……はっ!
もしかしてオレは今、「あ~ん♪」とやらを無意識にしてしまったのか!?
「だ、だって風見がレンゲ向けるから!!」
「この角度で出せば持ち直してくれると思うじゃないですか!?」
なんか食べにくいと思ったらそういう角度だったのか…めちゃめちゃ恥ずかしい…
「なんか熱くなってきたからもう寝る」
「いやいやもう少し食べてもらわないと困ります!!」
恥ずかしくて両手で顔を隠していると、風見がもう一掬いをふぅふぅと冷ましている
次はどんな顔して食べればいいんだ…
「しっかり持ってくださいね」
顔の赤い風見の左手にオレの右手をレンゲまで運ばれ、しっかりと持たされる
はい、今度こそ自分で食べます…
「クゥ~ン」
「あ、ハロ…」
オレがお粥を食べるのを大人しく見ていたと思ったら、風見にスリスリと甘えだした
「はいはい、君にはおやつがありますよ」
ハロの世話までしてもらって申し訳ないな…と思ったけど、風見もハロも楽しそうだからいっか
オレもハロの様に甘えたい…早く零、帰ってこないかな……
***
「アンッ!キャウ~♪♪」
「ん…ハロ…?」
ハロの楽しそうな声に目を覚ました
風見の作ってくれたお粥を食べて薬を飲んだ後、布団にヨコになっていて、いつの間にか眠ってしまっていたようだ
換気にと小さく開けてくれていた窓の外ももう夕陽がほぼ沈んでいる
「起こしてしまいましたね…」
すいませんと布団に近寄る風見はどこかボロボロで、オレが寝ている間もハロと遊んでくれていたのがわかる
「それにしても降谷さん遅いですね…夕方までには帰ると言っていたんですけど」
「そうなんだ…何かあったのかな…」
「アンアンッ!!」
「あ、こらワンちゃん!!」
急にハロが風見のズボンを引っ張ったり足元をクルクルと回ったり、なんだかちょっと怒っている様子で暴れだした