第8章 嘘の裏側/緋色シリーズ
「昼ご飯食べました?」
「ううん、今から食べようかなって」
お昼ご飯のことも零から聞いていた様で、用意をするから寝ていて欲しいと寝室に戻される
ハロはずっと風見の足元をついて歩いていて、以前零が世話を頼んだ時のことを覚えているんだろうな、すごく嬉しそうだ
正直言うとあまり食欲はない
でも薬を飲むことと風見が用意してくれることを考えると頑張ってでも食べなきゃなと思いながら、枕に顔を埋めて目を瞑る
風見が料理をするとか考えたことなかったな…
いつもコンビニ弁当だったりチョコレートだったり、職場ではそんなイメージが強いけど、暇ができれば男飯とか作ってそうだよな、なんて考えながらコンロの音を遠くに待った
出来上がる前にまた寝てしまいそうだ…
「リュウさん、もうできますからね!」
…食べないと寝させてもらえない気がしてきた
それから数分でお盆に乗せて運ばれてきたのは卵がゆだった
「降谷さん言ってましたよ、食欲ないのを理由に食べずに寝ているかもしれないから行って欲しいと。自分が作ったご飯なら無理にでも食べるだろうって」
零にはお見通しって訳か…しかも風見もオレにご飯を食べさせるというミッションを終わらせないと帰れない…
オレが風見に甘いのを知っての作戦だな…やられたわ
少しでも良いので食べてください、とエプロン姿で言う風見お母さんに促されて身体を起こし、布団で食べるのはなんとなく嫌ですぐ側のテーブルの前に座った
冷えない様にと使っていた毛布を小さくたたみ膝に掛けてくれる風見の気遣いに、冷えるどころかほっこり温かみを感じる
「降谷さんが用意していた物をレシピ通りに作ったので大丈夫だと思うんですが…」
「うんありがと、いただきます」
食欲のせいなのか熱のせいなのか、レンゲを持つ腕に重みを感じながらお粥を掬い、熱々の証拠である湯気を「ふぅー…」っと割りながら冷ます
だがその冷ます為に息を吹くのも、熱のある子どもの身体では体力がいることに気付いた
ふぅふぅするのもしんどいし、まだ熱そうだけど食べちゃおうかな…
「…あちっ」
「大丈夫ですか!?」
やっぱり熱かった
「自分がやりますね」
冷たいお茶を飲んでる間に風見がレンゲを持ちふぅふぅと冷ましてくれている
そんな姿を見て、風見は将来良いお母さん…いや、お父さんになるんだろうなぁと思った
