第7章 冷たい宅配便/小さな科学者と
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薬を買って家の駐車場に着くと、停車の感覚から叶音も目が覚めたようだ
「寝ちゃってた…」
起きて早々大きく欠伸をした叶音の顔を覗き込み、もう一度額や首に触れて体温を確認する
「……?」
両手で顔を包み込み目を合わせると、突然どうしたのかと聞きたげに首を傾げられてしまった
「少し熱っぽいと思うんだが?」
「そお?たぶんちょっと疲れてるだけだよ」
何がちょっとだ
風邪は引き始めが肝心なんだぞ
「零は疲れてない?」
小さな手で同じ様に両手で頬を包まれる
トロンとした目で見上げられ今すぐ食べてやりたいくらいだが、今は耐えろ自分…
僕にはこの鈍感で無自覚な体調不良天使にまずは検温をさせなければならない義務がある
「僕は疲れてないよ。さ、早く家に入って熱測るぞ」
「大丈夫だと思うんだけどな…」
しぶしぶ言いながらお互いのドアから車を降りる
そしてドアを閉めカギを掛けたその時、車の反対側に立っていた叶音がスっと地面に消えていった
「叶音!?」
慌てて反対側に回ると、ドアの前で自分の膝に額を付けてしゃがんでいる叶音がいた
「フラっとしただけだから、大丈夫…」
「じゃないだろ。早く調子が悪いのを認めるんだな」
しゃがんだままの叶音を抱き上げると首に腕を回され、運んでくださいとお願いをされた
少し認める気になったか…
今まで聞いたことがなかったが、なぜここまで体調が悪いのを否定するのだろうか
元気になったら聞いてみるか…
「ご飯は食べられそうか?」
「いらない…」
「じゃあすぐ寝るんだな」
「寝ない…」
……おい
「じゃあ何がしたい?」
「零と話がしたい」
さっきも話したいことがあると言っていたな
何か重要な情報でも手に入れたのか…?
「そこまで話したいことって何なんだ?」
「あのね、シェリーの真相と、解毒薬のことと、コナンのことと、あと…」
「あと?」
「ジンがジェットコースター乗ってた話…」
ちょっと待て、それはぜひ聞いてからでないと気になって看病どころではない
「どれも聞きたいが、ジンの話を早急に求める…」
「…くしゅんっ」
小さいくしゃみで返事をした叶音を足早に家に運んだ…
━7章END━