第2章 黒に落ちる/小さくなった理由
相変わらず熱を帯びている叶音を助手席に座らせ、車にあったジャケットを掛けた
ここから病院までの最短ルートを考えながら勢いよく車を出す
「…風見か!?至急警察病院の手配を頼む。被害者は10歳程と見られる少年、成分不明の毒薬を飲まされてるが、解毒薬を飲ませて応急処置済み。現在意識不明で熱がかなり高い。あと10分もあれば着ける。頼んだっ!」
部下への連絡を入れ、とにかくアクセルを踏んだ
こまめに叶音に目をやりながら警察病院を目指す
APTX4869は痕跡が残らない完全犯罪用の薬と叶音はジンに話していた
身体が跡形もなく縮んでしまうから痕跡が残らないのか…?
縮んでいたのが途中で止まったということは、解毒薬が効いていたから…?
じゃあ、この発熱は?
薬の反応に身体が悲鳴を上げているのか?
どういった薬なのか組織の中でまだ公にされていないから何もかもが推測になってしまう
とにかく病院での検査と、発熱をなんとかしてもらわないと、またいつ身体が縮んでしまうか……
それともうひとつ気になるのが、ライのこと
FBIというのは本当のことなのか
もし本当でなければ、叶音はまた組織に目をつけられるかもしれない
生存して小さくなったことが知られれば、人体実験だって考えられる
一体叶音は奴とどんな情報を共有していた?
奴がFBIで叶音を救いたいと言ったことが真実でなければ、この先僕達は……
━━♪
『降谷さん、病院の手配できました。既に緊急搬送用の急患口に私と医師で待機しています』
あれこれ考えを巡らせていると風見からの連絡が入り、同時に車内から病院も見えてくる
もう着くことを伝え、急患口へと更にスピードを上げた
とにかく今は叶音を救わなければ……
***
「お疲れ様です、患者は!?」
警察病院の急患口に車を雑に横付けし、すぐに降りて助手席側を開け、叶音を抱え、ストレッチャーに移す
「連絡が行ってる通りです。情報は他に掴めてません。とにかく、彼を救って欲しい…」
わかりました、と力強く頷く医師に、積もり積もっていた不安に少しの光が見えた
もう後は任せるしかない…そう思った時
「…れ…ぃ……」
熱にうなされた、幼くか細い声がした