第7章 冷たい宅配便/小さな科学者と
***side降谷
「ただいま!」
博士の家の玄関から駆け足で来た叶音におかえりと言い迎え入れる
何も言わずともすぐに盗聴器の類が仕込まれてないかのチェックを始める叶音を見て、この生活も慣れてきたなと感じた
そして盗聴器は今日もないようだ
「事件に巻き込まれて大変だったようだね」
「ホント大変だったよ…零が来てくれた時がちょうど犯人に見つかった時だったから、来てくれなかったらヤバかったんだよ」
車を自宅に向けて走らせると、叶音は冷蔵車に乗った経緯やそこであったことを順に話してくれた
宅配車の荷台なんて荷物にでもならなければ乗って運ばれることなんて一生ないことだからすごい経験をした、なんて笑ってるけど、無事に済んだことだから笑えるようなものだ
一連の流れを聞く限り、とても危険なことだったと思う
梓さんが見つけたレシートを蔑ろにせず本当に良かった…
そして僕が駆け付けた時に叶音がズボンを穿いていなかったのも、あの子に貸したからだとわかりホッとした
あの犯人達のせいだったと言われたら留置所まで乗り込んでもう一発殴っていたところだった
危ない危ない…
「とにかく無事で良かったよ」
それにしても運転をしながら叶音の様子を伺うが、目がトロンとしていてどこか疲れている様な気がする
「身体は平気なのか?だいぶ冷えてただろ?」
「うん、まだなんとなく寒い感じはするけど、博士の家で温まったから問題ないよ」
それを聞いてエアコンの温度を少し上げてやる
「家に着くまで少し眠ってもいいんだぞ?」
「うーん…そうしたいんだけど、零に話したいことたくさんあってさ…」
寝てる時間がもったいない、なんてそんな可愛いことを言われては話を聞かない訳にはいかないと思うが、今夜は家に着いてからだっていくらでも話せる
まずは少しでも叶音を休ませないと…
「じゃあ少し目を瞑って、眠れそうになければ話を聞いてあげるよ」
「ん、わかった」
頭を撫でてやった時の照れ笑いは幼児化してからも相変わらず僕の心を擽ってくる
さて、今日は少し遠回りでもして帰ろうか…
いつも曲がる交差点を直進すると、早速隣から可愛い寝息が聞こえてきた