第7章 冷たい宅配便/小さな科学者と
「うーん…」
「何?答えられないような仕事でもしてたわけ?」
急須から湯呑へお茶を注いで行く哀ちゃんにチラリと視線を送られてしまった…
光彦が倒れた時に冷静だったかは自分ではわからないけど、すぐに判断出来たのは経験なのかなと思う
応急処置の方法を知っていたのも、雪山のロッヂに追ってた犯人が逃げ込んでたことがあって、雪山行くならって知り合いの救助隊が教えてくれたんだ
まさかこんな宅配車の中で役に立つとは思いもしなかったけどね
「まぁいいわ。それで助かったのは事実だし?」
ありがとう哀ちゃん…今は言えないけど、いつか必ず言える日が来ると思うから…
「それに、あなたが言わなくてもに江戸川君が突き止めてくれるはずだから」
ひぇ~恐ろしい……
探偵は敵に回せないな…と苦笑いしながらお盆を持ち上げ、2人で外に向かった
パトカーの音も近付き、殺人事件とでも言ったからか刑事の車も一緒に門の前に到着する
説明は大方コナンがしてくれると思うから心配はないだろうと先に子ども達へお茶を配り、自分も喉を通す
温かさが身体に染み渡っていくのがわかるくらい真冬並みの冷えを感じていたようだ
さて、オレ達がケーキを食べられるのはいつになることやら…
***
あれから一時間もしないで事は終わり、沖矢さんからもケーキを受け取ってみんなでテーブルを囲んだ
せっかくの限定ケーキはあの宅配業者のアリバイ作りに巻き込まれ、玄関先で落とされたのであろう、無惨にも崩れてガッカリしていた子ども達である
でも味はピカイチ美味しくて、お腹に入れば同じだと笑いながら食べられたのは良かった
オレ的には博士のドーナツも美味しかったけどな♪
そして外は暗くなり始め、博士は今子ども達を自宅へと送り届けている
コナンとオレは本当はポアロまで歩く予定だったが、予定変更で迎えが来るからとそのまま博士の家に留まっている
「オレ達今日、宅配トラックに乗ってたんだよな~…」
「しかも冷えた荷台にな…」
「ある意味良い経験になったんじゃないかしら?」
ヒーターの前に3人三角座りでぽや〜っとする
哀ちゃん相手に「おめぇは特にな」と言ってしまうコナンはまた頭にタンコブを作っていて、苦笑いを浮かべるしかない自分がいた