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胸の扉

第2章 暁の国


先に家についていたアリアはイザークの前に立ち部屋を案内する。

「こちらがお部屋ですね。でもベットがこちらの部屋しかなくて・・」

案内しながら一つの部屋の扉を開く。
そこにはキングサイズの、なんとも大きなベットがおかれていた。
素材の良さを生かした素朴な雰囲気とは寝ても似つかない、ロココ調の豪華なものだった。

開いた口が塞がらない。

オーブのトップ、つまりかがりはこの状況を面白がっているのだろう。
それとも純粋に我々を応援しているのだろうか。
いや、彼女であればそのどちらもありえるだろう。

「私はベットで寝ますので。こちらは、その、アリア様がお使いください。」

「いえ、こちらはどうぞご使用ください。私は体が小さいですから。ここのソファーで十分です。」

まるでそよ風のように優しい笑みであった。
頰に熱が集まるのを感じる。
確かに彼女はイザークより小柄であった。
自然と見上げる形となり、それがまた彼女の可憐さを引き立たせている。

「それと、アリアで構いません。いえ・・。申し訳ございません。こんなことに巻き込んで閉まって・・・。私などと仲良くしていて良い方ではありませんものね・・・。」

しゅん、とまるで朝顔が萎むようにみるみる陰りを見せる。
そんな姿を見て慌てて弁解する。

「そんなことはございません!いや、その・・。こちらこそ、このようなことに巻き込んでしまい、申し訳ない。」

目線を合わせると、彼女はニコリと微笑んだ。

「ふふふ、では、私たち、お互い様ですね。」

その柔らかな雰囲気に緊張がほぐれる。

「そうですね。厄介なものにお互い巻き込まれました。」

ふふふ、と柔らかで、空気に溶けていくような優しい声で笑う。

噂で聞いていた人物とは大違いだ。
しかし、イザークもそこまで純粋ではない。
初対面を取り繕うことができる人間などごまんといる。

「もうそろそろお昼ですし、何か食べませんか?」

気まずくなり思わずイザークが提案する。

「ええ、そうですね。冷蔵庫に少しだけ食材が入っていました。でも、持って明日くらいの量でしたよ。」

一国の姫が食糧事情を考えるほどの知識があることに驚いた。
いや・・・。
これは偏見かもしれないな、と思い直し、悟られないよう2人でキッチンへ向かうのであった。
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